そのせいで、タモリさんに失礼なことをした可能性があるが、もちろん、それも覚えていない。まったく困ったものである。
大物芸能人・横山やすしとの思い出
大物芸能人との酒席の話でいえば、違う意味で緊張したのは、80年代前半、横山やすしさんとコント赤信号の三人で、一度だけ飲んだときだ。
たまたま『花王名人劇場』で共演し、やすしさんが声を掛けてくれたのである。
「この後、空いとるか? なら、一緒に飲み行こ!」
「は、はい!」
と返事はしたが、相手は、あのやすしさん!
まだ駆け出しの俺たちにとっては雲の上の存在だったし、喧嘩っ早いことでも知られていたので、みながみな、誘われた直後からビビり続けていた。
とにかく言われるがままに付いていった先は、やすしさんが行きつけにしていた銀座のバー。4人でカウンター席に着くと、やすしさんは、つまみも頼まず、ウイスキーをぐいぐい飲んでいた。
「ああ、大物の芸人さんて、こんなふうに飲むんだなあ」などと感動したりしたが、それよりも、「なにか失敗をして怒られるんじゃないか……」という不安が上回り、飲んでいても、気が気ではなかった。
そんなやすしさんが、俺たちに芸能界というものを教えてくれた。これがまたすごい。
「お前ら、ええか? 道を歩いてたらな、後ろから拳銃で撃たれるんや。芸能界っちゅーのは、そういうところや!」
「ええーっ、これは何のたとえだろう? 常に後ろから人が追ってくるというたとえなのかなー」かいろいろ考えていると、やすしさんがすかさず右手を拳銃の形にし、「バーーン!!」と叫びながら、撃つマネをしたのである。
「そ、そうなんですね……。わ、分かりました……」
これは今思い出しても怖かったなー。
おそらく2時間くらいだったと思うが、緊張しながら、飲んでいたので、まるで酔えなかったことを覚えている。