「タモリさんは、普段から肩の力が抜けていて、ピリピリしていたり、怒っている姿を見たことがない」
かつて人気番組『笑っていいとも!』の共演者だった、渡辺正行さんが語った「タモリさんのすごさ」とは? 著書『関東芸人のリーダー お笑いスター131人を見てきた男』(双葉社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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タモリさんのすごさ
1985年から『いいとも!』にレギュラー出演するようになった俺にとって、最も大きな出来事といえば、やはりタモリさんとの交流が生まれたことだ。
たけしさん、さんまさんを含めた「お笑いBIG3」に、20代の段階で出会えたことは、芸人人生において、プラスになっていることは間違いない。
そんなタモリさんは、普段、ワーキャー騒ぐような人ではない。いるだけでオーラがあり、いつも笑顔で“ふつう”にいる人だ。
基本的に、タモリさんをはじめ、『いいとも!』の出演陣は、毎回、新宿スタジオアルタに午前10時頃に集まり、10時半を過ぎると、客席から、ADさんが簡単に行うリハーサルを見ることになっていた。
リハーサルが始まる前は、みんなでよく世間話をしていたが、だいたいタモリさんはニコニコしながら、「どう?」とか聞いてくる。
「いやー、こんなことがありましたー」
みんながそれぞれ楽しそうに答えると、タモリさんもまた、楽しそうにうなずいてくれる。
そして、ときどき、ポンと言葉を返してくれるのだが、その一言が絶妙に面白い!
そこでの相手の反応も楽しんでいるというか、タモリさんは、おそらく人に興味があるのだろう。
日替わりでトークのゲストを呼んでいた「テレフォンショッキング」は、それが最も生かされたコーナーではないだろうか。
タモリさんは、ゲストに合わせて、すーっとトークの雰囲気を作る。ゲストの面白そうなところに、自分の興味のあるところに、クイッと入り、そこを面白がる。上手い!
で、いつしか会話も弾み、ゲストや観客、視聴者が満足の行くトークコーナーとして成立させてしまう。
また、タモリさんは、普段から肩の力が抜けていて、ピリピリしていたり、怒っている姿を見たことがない。
『いいとも!』は、正午から1時間の生放送。
本来なら、緊張感が高まりそうなものだが、タモリさんは、本番中と本番の前後をくらべても、力の抜け方がまるで変わらなかった。
たとえば、オープニングの前は、舞台袖で、出演者の俺たちとずっとバカ話をしていた。「よし、やるぞ!」というような気合いは見えない。