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 正午を迎え、お決まりの歌が流れ始めても、その雰囲気のまま、マイク片手に舞台に登場していく。そして、CMに入り、再び舞台袖に戻ると、「いやあ、今日は歌に力を入れすぎちゃったかなあ」などと、笑いながら話したりしていた。

 そんな人が長年司会を務めていたわけだから、『いいとも!』の収録中、いつもスタジオはフワッとした空気感に包まれていた。そうした場にもかかわらず、俺の場合、どうしても意気込んでしまうため、出演しては、よくスベッていたものだ。

 さらに、タモリさんは、酒を飲んでいるときも、いつもと変わらず、ポイント、ポイントで面白いことを言って、楽しませてくれた。ワイワイ騒ぐわけではなく、実にゆったりとした飲み方だった。

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タモリさんと初めて二人で飲んだ夜

 ただ、「ナベちゃん、一緒に飲もうよ」と誘われ、初めて二人だけで飲むことになったときは、さすがに緊張した。

 青山にある、いかにも高級そうな日本料理店に入り、きれいな白木のカウンターに並んで腰掛けたことも、緊張に拍車をかけたに違いない。

 今思えば、二人きりの酒ということは、タモリさんとしては、何か意図があったのだろう。

 もしかしたら、俺に期待する言葉を掛けてくれたのかもしれない。

 しかし、あのとき何を話したのか、当時も今も、まるで覚えていない。

 なぜなら、最初から、どうしていいのか分からず、「えーい、とにかく酔っ払っちゃえ!」と思い、飲みすぎてしまったからだ。