2023年12月17日。ジュンク堂書店池袋本店にて『夢破れ、夢破れ、夢叶う』(時事通信社)の出版記念トークイベントが行われた。登壇したのは、将棋棋士の小山怜央四段と、同じく棋士の遠山雄亮六段。同書は、小山怜央四段にとって初となる著書である。
「夢破れ、夢破れ、夢叶う」は、小山四段が棋士になるまでの人生を端的に言い表したことばだ。中学生のとき、そして大学生のとき、棋士の養成期間である奨励会の試験に2度とも不合格。しかし夢を諦めることなく2023年の2月に棋士編入試験に合格して、プロ棋士になった。
遠山六段が聞き手役としてイベントに出演
奨励会を経ずに棋士になったのは、現行制度になってからは初の快挙だ。くわえて、岩手県出身者のプロ棋士も初めてということで、大きな注目を集める小山四段。このイベントの模様をレポートしたい。
19時30分。会場に集まったファンの拍手に迎えられ、小山四段と遠山六段が登壇した。
遠山六段は、小山四段の棋士編入試験の直前から練習将棋の相手となるなどの親交があり、このイベントには、聞き手役として出演している。
実は、前週には小山さんの故郷の岩手県釜石市の桑畑書店、そしてジュンク堂書店盛岡店でも記念イベントが行われていた。
棋士編入試験に至る話をいくつか小山四段に質問
遠山 盛岡のイベントに一緒に行ったのですが、メディアの数が本当にすごかった。私が関わったもので、いちばん多かったですね。NHKの岩手放送局の方も来られていて、イベント後に、かなり時間をとってインタビューもされていたんですよ。小山さんは、ほんとに岩手のスター。岩手といえば大谷翔平か小山怜央ですね。
小山 そのフレーズは先週も(笑)。
遠山 まあ先週、用意していったフレーズです(笑)。でも実際に取材陣の数を見て、本当にそうなんだなと思いましたよ。
県内初のプロ棋士として、岩手県内ではとりわけ大きな注目を集めている小山四段は、大学を卒業するまで同県の釜石市と盛岡市で過ごした。遠山六段は、岩手で過ごした時期の話は本で読んでいただくとしてと告げ、棋士編入試験に至る話をいくつか小山四段に質問していった。
遠山 大学1年のとき「将棋倶楽部24」にはまったとあったのですが、どれくらいレーティングがあったんですか?
小山 覚えているのは最高で2900点くらいです。
遠山 すごい。これはプロレベルですよね。
小山 早指しは得意でした。
遠山 これくらいなら、三段リーグ編入に必要とされる6勝2敗を取れるのでは?
小山 でも負けた要因はけっこうあると思っています。勢いで勝ちを目指す将棋だったので、じっくり対応されると持ち味が出ない展開になるんですよ。