遠山 116手目、横山四段が銀を上がったときの局面、一度席を立った小山さんが戻ったときの様子がこう書かれています。《しばらくして小山アマが戻り、ペットボトルの緑茶をグラスに注ぐ》。これは、いかにもプロが勝ちを見切ったときの行動なんですよね。
小山 そうなんですか。
遠山 そう。まずトイレに行っておかないと、感想戦が始まってからは言いづらいじゃないですか。あと、盤から一度目を離して、改めて一口水を飲んで「大丈夫だな」と確認する。プロはこういった所作をするんですね。中継記者がこう書いたのも、間違いなく小山さんが勝ちにいっていると感じたからなんですよ。そしてここで、飛車を切る。これは勝ちを読み切った手ですよね。
小山 そうですね。何回も読み直して。8分くらい考えていますかね。角の組み立てでした。
遠山 それで勝ちになった。どうでした? この局面を目の前にして。
小山 まずは、詰むことを確認して。それでなんともいえない気持ちです。本当に詰んでよかったと。
遠山 勝つときってそういう気持ちですよね。嬉しいというよりホッとするというか。
その後、投了の局面まで駒を動かして大盤を使った解説が終了した。投了の場面では、観客から拍手が送られた。少し照れた表情の小山四段から、その人柄がよく伝わってきた。
大盤解説を終え着席後、話題はこれからの抱負やイベント参加者の質問に移っていった。
これからは実力の向上を目指す
遠山 今、忙しいですか?
小山 意外と最近、忙しくて。今月(12月)は全部予定が埋まっちゃいました。
遠山 それも成績が伸び悩んでいる(このイベント時の成績は5勝6敗)ひとつの要因になっていませんか。忙しいときに研究時間を確保するのは難しいんですよね。そのあたりどうですか?
小山 あまりそういうこと考えてなかったので、今後の課題にしたいです。
遠山 いやいや、気になっていないというのであれば、忙しさは関係ないんですよ。こういうのは年齢や気持ちもあるので。小山さんは30歳で、プロになって1年目なので気持ちも高揚しているから大丈夫でしょう。こっちは18年目とかなので(笑)。これからの抱負はありますか?
小山 何よりも結果を出したい。勝率を上げたいということですね。ただ、その基となる自分の将棋を改善していきたいです。まだ序盤が荒いので、どんな戦型になっても自分の将棋が指せるようにするというのが目標です。
遠山 まずは結果もだけど、内容というか実力の向上を目指すと。
小山 そうですね。