現状では約9割が1割負担だが…
2000年にはじまった介護保険制度は3年に一度改正され、次回は2024年、次々回は2027年だ。今後の改正では、利用時の自己負担割合を原則2割以上(現状は所得に応じて1~3割負担)、ケアプラン(介護計画書)の有料化、要介護1、2の認定者を介護保険の非対象とする案などが検討されている。
現状では約9割が1割負担だが、仮に原則2割負担となった場合には、たとえば1ヵ月3万円の自己負担分が6万円、年間では36万円も増額する。
高齢者の約半数は年金や恩給のみで生活し、高齢者世帯の約3軒に1軒は年間所得が200万円以下だ。
公的施設の入所者には、年金と貯蓄の取り崩しで費用を賄うといったケースも多いが、介護保険の自己負担分が増えることで支払いができなくなる恐れもあるだろう。
高齢者の施設入所が厳しくなれば、否応なく在宅介護をせざるを得ない。そもそも国は、「地域包括ケアシステム」と称し、在宅での医療や介護を中心とした高齢者支援の方向性を打ち出している。2025年には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、一層の社会保障費増額が予想されるからだ。
入院や施設入所に比べ、自宅で、家族介護を受けてもらったほうが公費負担は減る。要は安上りな方法を推進するために、「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるようになります」(厚生労働省/「在宅医療・介護の推進について」より抜粋)と謳うが、果たして本当だろうか。
「自分事」として考えてほしい
私が体験したように、親の介護サービスが打ち切られるとか、訪問診療クリニックが見つからないとか、実際の在宅介護には数多くの問題が生じる。
介護や医療スタッフがいないとき、誰が、どうやって世話をするのかという問題は、実のところ当の高齢者だけでなく子世代、つまり現役世代に深く関わる問題だ。
私は多忙な仕事を持ち、疲労や不安と闘いながら、かろうじて遠距離介護をつづけた。同じようなビジネスケアラーは2030年に318万人に増加、離職や労働生産性の低下によって9兆1792億円の経済損失額が生じる(経済産業省/産業構造審議会部会試算)と予想されている。
どこで、どんなふうに死ぬか。
誰が、どうやって親を看取るのか。
自分の仕事や家庭生活と、親の介護は両立できるのか。
超高齢化社会と言われるこの国で、高齢者も、その子世代である現役世代も、「自分事」としてしっかりと考え、介護や看取りに関心を持ってほしいと思う。