たまたま写真を撮った場所がかつて赤線・青線だった
――現在は色街写真家として遊郭や赤線(合法売春地域)・青線(非合法売春地域)の跡地、現代の風俗街などを撮影していますが、写真を始めた当初はどういう場所を撮っていたのですか。
紅子 もともと路地裏や、昭和な雰囲気のあるスナック街のような場所が好きで、気になった場所を気ままに撮っていたんですけど、インスタグラムに投稿する前に調べたら、撮った場所がだいたい遊郭とか赤線・青線の跡地だったんです。
例えば、用事でたまたま横浜に行ったときに、気になる裏道を撮ってみたら、そこが「親不孝通り」と呼ばれていて、かつて赤線だったみたいな。
あとは新宿のゴールデン街もそうだし、西荻窪駅の南口のほうにある飲み屋街なんかも、写真を撮ったあとに調べてみたら、青線の歴史をたどっている地域でしたね。
――ちなみに遊郭や赤線・青線の跡地には、どんな特徴があるのですか。
紅子 今ソープランドや風俗街になっている場所は、歴史をたどると昔は遊郭で、遊郭の時代が終わったあとに赤線を経て、現在の形になっているところが多いです。
建築に関しては、豆タイルとか、アール状の庇、ひょうたん型にくり抜いた壁や扇形の窓とかが特徴的です。京都や名古屋には、大正時代に流行ったモダンな建築が残っているところもあります。
写真を通して歴史や生々しさを感じてほしい
――ご自身は、遊郭や赤線・青線跡地のどんな部分に魅力を感じているのでしょう。
紅子 例えば遊郭の跡地でも、きれいに保存されている立派な建物にはあまり興味がなくて。どちらかというと、荒々しさが残っていたり、退廃的な場所のほうが惹かれますね。そのほうが、リアルな人間の営みがあったことを感じられるというか。
遊郭や赤線・青線は、もともと男女がそういう行為をするための場所なので、その生々しさや歴史を伝えたいんです。もちろん建築物としても素晴らしいんですけど、その裏側にはそういう歴史が実際にあったことを、写真を通して感じてほしい。そういう思いで撮影していますね。