――その歴史や生々しさを特に感じられる場所はありますか?
紅子 愛媛県松山市の土橋料亭街は強烈でしたね。かつて「ちょんの間」だったお店が、屋号とかもそのままの状態で残っているんです。都内だとあり得ない。
ちょんの間として使われていたスナックを窓越しにのぞくと、カウンターがあって、1階が飲み屋さんっぽくなっているんですけど、風俗店として使われていた名残りがある。時代から置き去りにされたような、色街としての歴史がそのままギュッと凝縮されたような場所で、すごく印象的でした。
自分の過去を公表したワケ
――紅子さんは風俗店で働いていたことを後悔していると別のインタビューで話されていましたが、「色街写真家」としての活動は、どうしてもご自身の過去と向き合う形になりませんか。
紅子 実際に後悔はあって、とくに子どもが生まれてからは、もっと違う生き方があったんじゃないかと思っていました。それに売春というか、体を売る仕事というのは、世の中との関わりが限られてしまう場合もある。それはすごくもったいなかったなと。
でも今は、色街が単にいかがわしい場所ではなく、そこにきちんと歴史があるというのを自分の写真を通して伝えることで、過去を取り戻している感覚なんです。時間は戻せないけど、後悔していた過去の自分と向き合っているような気持ちです。そして、こうやって社会に帰属していろいろな人と関わることで、「人から受け入れられたい」という幼い頃からの思いがようやく叶ったように感じています。
――ご自身の過去を公表したのはなぜでしょうか。
紅子 写真に対する反響をいただくなかで、なぜ自分がこういう写真を撮っているのか、その背景や想いを伝えたいと思ったんです。そうしないと、私が写真を撮っている意味がないと感じて。だから、YouTubeを始めたのをきっかけに、きちんと自分の言葉で過去を公表しました。
――その公表に対する反響はどうでしたか。
紅子 結構ひどいコメントもありました。「あなた、頭大丈夫ですか?」みたいなのとか。YouTubeで子どもがいることを話したあとは、「こんな動画全部削除しなさい」とか「自分が何を言ってるのかわかっているの?」とか。女性からも男性からも批判的な意見が多かったですね。
私が風俗で働いていたことを知らなかった友人からは、「子どもが見たらどうするの? 今すぐやめなさい」と言われたりして。今はほとんどそういう批判は無くなりましたけど。