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「みんな介護にお金をかけすぎ」「私は一銭も出していない」柴田理恵(64)がプロに聞いた“介護費用を安くするためのポイント”

『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』より #1

2024/01/03
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施設選びの5つのポイントとは?

川内 そう思います。あと施設選びのポイント5点を指摘したいと思います。

(1)「すぐ入居可」「残り1室」と言ってくる施設はNG:入居を急かすような施設は要注意。

(2)見学は昼食の時間に行く:忙しいのでスタッフのスキルが露わになる。

(3)職員の離職率を調べる:離職率の平均は約14%。30%超は要注意。離職率は厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)で確認できる。システムを利用する際の手順は(https://www.tonarino-kaigo.org/wp/wp-content/uploads/2023/09/howtofindout.pdf)を参照。

(4)月額料金は総額を聞く:ホテルコスト(家賃、光熱費、食事代など)のほかに介護保険の自己負担分、おむつ等の備品代などの総額を必ず確認する。

(5)看取りケアをやっているか確認する:収益確保優先の施設は看取り介護(施設で最期を迎えるための介護)をやりたがらない。

柴田 施設の従業員の離職率とかってわかるんですね。

川内 そうなんです。施設選びの重要な指標なので、ぜひ確認するといいと思います。

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柴田 施設入居でもう1つ。どう考えても施設に入ったほうが親にとっていいのに、なかなか親が受け入れないケースもあると思うんですが、そのときはどうすれば?

川内 施設入居を親の「いい記憶」と紐付けることです。たとえば、生まれた町にある、通った学校のそばにある、結婚する前によくデートした公園が見える、等々です。

 後付けでそうした理由を探すのではなく、最初からそうした「いい記憶」のある場所で施設を探すほうがいいかもしれません。もちろん可能であれば、ですが。

柴田 立地の面からポジティブな印象を持ってもらう作戦ですね。

川内 そうです。だから、たとえば「あの施設は、お母さんが昔お父さんとよくデートしたと言ってた、あの公園のすぐそばにあるんだよ。楽しい思い出がいろいろ甦ってくるんじゃない?」、そんなふうに親の心を解きほぐすわけです。

 

介護は親から子どもへのメッセージ

川内 親の介護は理不尽の連続で、親が認知症になると、子どもでも泥棒扱いされるような世界です。そうすると嫌でも、人間って何だろう、生きるって何なんだろうと考えます。

柴田 それってすごくよくわかります。入院したまま、なかなか実家に戻れない母を見ると、思うんです。残された時間をどうすることが母に一番いいことなんだろうと。

 それはもちろん母の生き方や命や幸せを考えることなんですけど、同時に自分の生き方や命や幸せを考えることにもつながっていて、そう考えると、母は人生最後の時間を通じて、私に大事なことを教えてくれているんだなと思うわけです。

川内 本当にその通りだと思います。私たちは普段そんなことは考えずに日々生きていますが、柴田さんがいまお母様と向き合われているように、要介護の度合いが進むと、どうしたって子どもは死というものをイメージするし、背中合わせの生についても深く考えるようになる。死を考えるのは、いかに生きるかを考えることです。

柴田 自分にとって何が大切で幸せなのか。

川内 そう。自分の人生と深く向き合うようになるんです。

柴田 親は介護を通じてそれを教えてくれるんですよね。

川内 その意味では介護というのは、親から子どもへの人生最後の教えであり、メッセージなのかもしれませんね。

「みんな介護にお金をかけすぎ」「私は一銭も出していない」柴田理恵(64)がプロに聞いた“介護費用を安くするためのポイント”

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