施設選びの5つのポイントとは?
川内 そう思います。あと施設選びのポイント5点を指摘したいと思います。
(1)「すぐ入居可」「残り1室」と言ってくる施設はNG:入居を急かすような施設は要注意。
(2)見学は昼食の時間に行く:忙しいのでスタッフのスキルが露わになる。
(3)職員の離職率を調べる:離職率の平均は約14%。30%超は要注意。離職率は厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)で確認できる。システムを利用する際の手順は(https://www.tonarino-kaigo.org/wp/wp-content/uploads/2023/09/howtofindout.pdf)を参照。
(4)月額料金は総額を聞く:ホテルコスト(家賃、光熱費、食事代など)のほかに介護保険の自己負担分、おむつ等の備品代などの総額を必ず確認する。
(5)看取りケアをやっているか確認する:収益確保優先の施設は看取り介護(施設で最期を迎えるための介護)をやりたがらない。
柴田 施設の従業員の離職率とかってわかるんですね。
川内 そうなんです。施設選びの重要な指標なので、ぜひ確認するといいと思います。
柴田 施設入居でもう1つ。どう考えても施設に入ったほうが親にとっていいのに、なかなか親が受け入れないケースもあると思うんですが、そのときはどうすれば?
川内 施設入居を親の「いい記憶」と紐付けることです。たとえば、生まれた町にある、通った学校のそばにある、結婚する前によくデートした公園が見える、等々です。
後付けでそうした理由を探すのではなく、最初からそうした「いい記憶」のある場所で施設を探すほうがいいかもしれません。もちろん可能であれば、ですが。
柴田 立地の面からポジティブな印象を持ってもらう作戦ですね。
川内 そうです。だから、たとえば「あの施設は、お母さんが昔お父さんとよくデートしたと言ってた、あの公園のすぐそばにあるんだよ。楽しい思い出がいろいろ甦ってくるんじゃない?」、そんなふうに親の心を解きほぐすわけです。
介護は親から子どもへのメッセージ
川内 親の介護は理不尽の連続で、親が認知症になると、子どもでも泥棒扱いされるような世界です。そうすると嫌でも、人間って何だろう、生きるって何なんだろうと考えます。
柴田 それってすごくよくわかります。入院したまま、なかなか実家に戻れない母を見ると、思うんです。残された時間をどうすることが母に一番いいことなんだろうと。
それはもちろん母の生き方や命や幸せを考えることなんですけど、同時に自分の生き方や命や幸せを考えることにもつながっていて、そう考えると、母は人生最後の時間を通じて、私に大事なことを教えてくれているんだなと思うわけです。
川内 本当にその通りだと思います。私たちは普段そんなことは考えずに日々生きていますが、柴田さんがいまお母様と向き合われているように、要介護の度合いが進むと、どうしたって子どもは死というものをイメージするし、背中合わせの生についても深く考えるようになる。死を考えるのは、いかに生きるかを考えることです。
柴田 自分にとって何が大切で幸せなのか。
川内 そう。自分の人生と深く向き合うようになるんです。
柴田 親は介護を通じてそれを教えてくれるんですよね。
川内 その意味では介護というのは、親から子どもへの人生最後の教えであり、メッセージなのかもしれませんね。