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――コメディでの草刈さんは飄々とした雰囲気が持ち味ですが、ルーツが『社長シリーズ』だったことに納得がいきました。コメディといえば、2014年に三谷幸喜さんの舞台『君となら』に出たことで役者としての幅が一気に広がったそうですが。

草刈 この時期、二枚目路線コンプレックスがぶり返していたんですよ。僕は、ネガティブで、なにかと引きずる性格なものですから。

 そこへ「下町の床屋の親父役で出てください」と。それ以前には角野卓造さんがやられていた役で、もう角野さんにしか演じられないような役でしてね。「なんだって僕に」という驚きと不安があったんですけど、楽しく演じられたんです。それで吹っ切れたといいますかね。

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 その舞台の最中に、三谷さんから直々に『真田丸』のオファーも受けているんです。その頼み方が振るっていて「今度、大河で『真田丸』をやるんですけど、あのときの丹波さんの役をやってください」と、『真田太平記』のことを持ち出すんですよ。これは受けるしかなかったです。

「足腰が立たなくなるまでは、やろうかなと」

――映画デビュー作が『卑弥呼』(1974年)だったり、時代劇に出演されても違和感がないですよね。

草刈 そうなんですよ。バタ臭い顔だから、いくらなんでも時代劇はできないだろうと思っていたんです。これは手前味噌になりますけど、『卑弥呼』の次に出た『沖田総司』(1974年)のラッシュを観て、僕が沖田総司を演じていても違和感を抱かなかったんですよね。

 その2年後に、『風と雲と虹と』(1976年・NHK)という大河ドラマにも出させてもらって。忍者役でしたけど、これも自分としてはしっくりいっていましたね。

 それ以降も『真田太平記』や『花の乱』(1994年・NHK)、『義経』(2005年・NHK)、『江~姫たちの戦国~』(2011年・NHK)、そして『真田丸』と時代劇や大河にキャスティングしていただいて。ありがたいことですよ。

――俳優は続けられるかぎり、続けていきたいですか。

草刈 足腰が立たなくなるまでは、やろうかなと思っているんですけどね。もちろん、やらせていただけるのであればの話ですけど。来年で72歳でしょう。いろいろ弱くなってきているので、動いたほうがいいだろうなってのもあります。

 かみさんからは「死ぬまで働いてもらうわよ」みたいなことを言われてます(笑)。僕は仕事がないときは、家から出ないでソファでボーッとテレビを観てるんです。そんな夫だから、健康のためにも仕事をしてくれってことじゃないですかね。

 

写真=鈴木七絵/文藝春秋