文春オンライン

「手の届かないところにある問題はどうにもならない」件について

酸っぱい葡萄は見ているほかない

2018/03/29
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たぶんトランプ政権はあんまり細かいことを考えていない

 それでも、北朝鮮の理屈に中国が乗ることで、アメリカは無理に北朝鮮を攻撃した際に「和平プロセスに乗っていた朝鮮半島の安全をアメリカが積極的に犯した」と指弾されかねないという現状もあります。というか、たぶんトランプ政権はあんまり細かいことを考えていないと思うのです。

 その直前には、アメリカから一方的に仕掛ける形で中国の経済政策を強く非難しスーパー301条の発動も含めた貿易戦争をしかけ、世界的に穏やかな好景気を実現し株高水準を維持してきた経済状況に思い切り冷や水を浴びせているのもトランプ政権です。もちろん、中国の経済というのは言わば「でっかい保護主義」であり、オバマ政権のあいだに急成長した中国が、国内事業を保護するばかりか恣意的な当局による規制で海外事業者が不利な状況に置かれ続けたまま気がついたころには取り返しのつかないぐらいの経済成長を遂げてしまったというのが実際ですから、原理原則で言えばトランプ大統領が代弁する「アメリカ国民の怒り」もまあ分からないでもないのですが、それでも「同じやるにしてもやり方というものがあるだろう」と批判しつつ、振り上げた拳がどう振り下ろされるのか、その後の推移も含めて興味深く見る他無いというのが現状です。

トランプ大統領 ©getty

ダイナミックな東アジアの安全保障の動きの中の、佐川さん

 一方、ロシアではプーチン大統領が圧倒的な得票率で大統領に再任され、こっちはこっちで政治的には盤石な体制を作り上げております。気がつけばトランプ大統領とのロシアゲート疑惑も、イギリスやEUとの緊張激化で外交官がまとめて国外追放されている件も、終わらないシリアでの紛争も含めていろんな意味で「ロシアっぽい動き」に対しみんなで困惑するという定番の展開になっているのが泣かせます。すさまじく安定した、不安定要因。

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プーチン大統領 ©共同通信社

 そんななか、我が国で起きていることは森友問題であり、安倍昭恵さんであり、国会でのすったもんだなんですよね。いやまあ、日本国内の民主主義がどうであるかというのもまた、非常に大事なファクターであることには変わりがないわけですけど、狭い海峡を挟んだ向こうで東アジアの安全保障についてあれこれ大きな動きがある中で、佐川さんが国会で吊るし上げられている状況は、ある種の現実逃避なのでありましょうか。もちろん、大事なことですよ。国会答弁での整合性を担保するために、政権の情況を慮って財務省が公文書を書き換えました、改竄ですねというのは、国民が普段暮らすなかで一番公平で確実な文書であるはずの公文書が右から左に書き換えられるというのは怖ろしいことです。