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 韓国の大手芸能事務所は、練習生1人当たり年間で1億ウォン以上の育成費用がかかると言われる。まだ韓国内に残る反感を押し切ってまで、それほどの育成費用を投資する価値があるのかどうか。それを証明することが、宮脇が直面したもう一つの壁だった。

 すでに宮脇は、IZ*ONEでの活動を通じて、日本、韓国、中国の3国で人気を集めていたが、ファンダムではなく大衆からの支持を獲得することは、また別の話だった。業界内では、「韓国内で反感を買う恐れのあるメンバーがいる以上、成功は難しいのではないか」という慎重な分析が出たりもした。

いじめ疑惑によるメンバーの脱退

 さらには、2022年4月にLE SSERAFIMはデビューを果たしたものの、早々に、当初メンバーであったキム・ガラムが健康上の理由によって脱退。その背景には、デビュー前に学校内でのいじめに加担していたのではないかという議論があったために、グループ自体にも厳しい視線が注がれた。

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デビュー当初は6人グループだった。左から、日本人メンバーのカズハ、キム・チェウォン、サクラ、元メンバーのキム・ガラム、ホン・ウンチェ、ホ・ユンジン(LE SSERAFIMのインスタグラムより)

 あらゆるレッテルが貼られたまま活動をスタートしたLE SSERAFIMが、すでに世界的に人気を博しているTWICEやBLACKPINKなどの第3世代のガールズグループの後を追えるのか。さらには、第4世代として破竹の勢いでデビューしたaespaやIVEなどと並んで人気を獲得できるのかどうか。周囲は疑念と期待をもって、その行方を注視していた。

発売初週でミリオンを達成

 だが今では、「(HYBEの代表である)パン・シヒョクの目は正しかった」と業界の意見は一致している。宮脇が早々に韓国の大衆が求めるカルチャーに適応したのはもちろん、他のメンバーとの人気格差もなく、スキャンダルや炎上もないまま、デビュー1周年を駆け抜けたからだ。

 実際、LE SSERAFIMはデビュー前の懸念が色あせるほど、短期間で巨大なファンダムを獲得している。

 デビューアルバム「FEARLESS」は発売初日だけで17万6861枚を売り上げ、当時の「ガールズグループのデビューアルバムの初日最多売上」の記録を更新するとその勢いのまま、「デビューアルバムで30万枚以上の売上を記録した初のK-POPガールズグループ」として位置づけられた。さらに今年5月にリリースされたアルバム「UNFORGIVEN」は発売初週だけで100万枚を超え、ミリオンセラーを達成した。

LE SSERAFIM ©時事通信社

 このように、LE SSERAFIMの人気が高まると、宮脇と韓国の大衆の間にあった心理的なハードルも少しずつ低くなっていった。ここには彼女がバラエティ番組でみせる活躍の影響も大きいだろう。