2023年、韓国の音楽シーンを語るうえで欠かせないキーワードはまさに「J-POP」だった。昨年末から少しずつ予兆はあったが、今年は、アニメや映画などのコンテンツと結びついて本格的に存在感を発揮していた。
そんな韓国でのJ-POPブームにおいて、ぜひ触れておきたい存在がYOASOBIだ。なぜ、彼らの楽曲は、ここまで韓国人の心を掴んだのだろうか?
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Z世代の感性をくすぐったimaseの「NIGHT DANCER」がJ-POPとして初めて韓国の音楽チャート「Melon」のTop 100に入るヒットをみせると、韓国でも479万人もの動員を記録したアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』の主題歌「第ゼロ感」を手掛けた10-FEETは3回も来韓。優里、藤井風、あいみょんといったアーティストの人気も依然として高い。
そんな2023年の“J-POPブーム”の核となったのが、コンポーザーのAyase(29)とボーカルのikura(23)による音楽ユニットYOASOBIの「アイドル」という楽曲だった。
人気K-POPアーティストを抜く大ヒット
アニメ『推しの子』のテーマソングとして発表されたこの曲は、コアなファンを越えて、瞬く間に一般的な韓国の大衆に広がった。
YouTubeの韓国内のクリック回数で集計する「Korea Top 100 Weekly」で1位を記録すると、年間の「YouTubeミュージックビデオランキング」でも6位にランクイン。これは、New JeansやBTSのジョングク、SEVENTEENといった人気アイドルたちの楽曲を抜いており、目に見える大ヒットだった。
YOASOBI側も、こうした韓国のファンのニーズに応えるかのように、韓国の音楽番組への出演や、韓国ライブの開催など、活発な動きを見せている。
当初は“アニメの曲”としてささやかに話題を集める程度だった
筆者は当初、韓国内で爆発的にヒットするJ-POPの特徴とは、ある程度韓国人にも馴染みやすい音楽であることが必須だと考えていた。たとえば、前述の優里やあいみょん、藤井風、imaseの楽曲には、歌詞こそ日本語ではあるものの、メロディーラインには韓国でのヒットソングと通ずるような、普遍的な魅力がある。
そういう面で、アニメの主題歌としてリリースされ、日本の文化が色濃く反映された「アイドル」が、一部のファンだけでなく、一般層にまで広く聴かれるようになることは予想できなかった。
実際、「アイドル」も当初は“アニメの曲”としての存在感の方がはるかに優位であり、一部のファンダムや、知り合い同士でささやかに話題を集める程度だった。