近年はYouTubeやNetflixといったストリーミングサービスの普及によって、韓国内での日本アニメのファンは増加しており、『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』、『呪術廻戦』などのタイアップの曲も、一定の認知度がある。しかし、「アーティストはわからないがこの曲は知っている」というケースが多く、その人気もファンの間で止まっていた。
「アニメーションタイアップ」はJ-POPが韓国に流入する最も大きなルートであるが、その消費が一部の人々のみで行われてしまうという側面があった。
「アイドル」が大衆に広がった理由
それでは、「アイドル」はどのようにして一般大衆にまで広がったのだろうか?
大きな理由は、TikTokやインスタグラムでのショート動画で爆発的に拡散されたことになるだろう。これは、日本市場をターゲットにするK-POPグループの存在が大きい。
まず日本で「アイドル」が話題になると、K-POPグループに所属する日本人メンバーを中心に、SNSでダンスチャレンジ動画が相次いで投稿された。グループのファンたちがその光景を見るやいなや拡散し、次第にアイドルが「アイドル」を踊る姿があらゆるSNSで目に入るようになった。
韓国の若者によく知られたJ-POPの一つに、HoneyWorksの「可愛くてごめん」があるが、これはショート動画で頻繁に使われたことがブームを生んだ先例だ。
YOASOBIの2人が構築する音楽の完成度
ただ、「アイドル」という楽曲が興味深いのは、はじめは曲中の特徴的なフレーズや振り付けが、流行語のように拡散されたものの、次第にその音楽性自体に韓国人が魅了されていったという点にある。
「アイドル」はサウンドと構成の面で、K-POPの要素がかなり反映されていると感じる。壮大なイントロはBLACKPINKの「How You Like That」を連想させ、ミックスポップとしての構造などはNMIXXの「O.O」を思い出させる。
ここに、日本のアニメソング特有のムードと、Ayaseの特技とも言える頻繁な転調を加えることで、韓国のリスナーを取り込む立体的な魅力の曲が完成した。
さらに、相反する感情を上手に描き出すikuraのボーカルにおける表現力も、音楽と大衆をつなぐという役割を見事に果たしている。YOASOBIの2人が構築する音楽は、高い完成度とともに韓国人の心を掴んだのだ。
韓国公演のチケットは1分で完売
「アイドル」が高い話題を集めると、「夜に駆ける」や「怪物」、「群青」といったYOASOBIの過去の楽曲も再注目された。そのタイミングを計ったかのように発表された2日間の来韓公演はすべて予約開始1分で完売。それは、当初「アイドル」という歌だけに向けられていた関心が、アーティスト自身にまで広がったことを示していた。