東京から見ると、川崎の次の町は横浜だ。東海道線に乗れば、品川駅の次が川崎駅、そして横浜駅と来る。川崎市と横浜市は隣り合っているし、川崎駅を出た列車はほどなく横浜市に入る。“川崎の次は横浜”というのはまったく間違っていない。
しかし、そこは天下の大都市、横浜である。東海道線はともかく、各駅停車の京浜東北線は川崎と横浜の間にいくつか駅を持つ。具体的に挙げれば、鶴見・新子安・東神奈川の3駅だ。
このうち、いちばん大きな駅は、鶴見駅だ。お客の数は約6万6000人(2022年度1日平均の乗車人員)。新子安・東神奈川両駅とは比べものにもならない。
JR“ナゾの箱根駅伝中継所の駅”「鶴見」には何がある?
だいたい、「鶴見」という名は横浜市を構成する区のひとつにもなっている。鶴見区の人口は約30万人で、丘陵上にニュータウンが広がる青葉区や港北区に次ぐ。つまり、鶴見駅はそれだけ大きな町のターミナル、というわけだ。
鶴見駅は歴史的にもスゴい。1872年、新橋~横浜間に日本で初めての鉄道が開業したとき、途中駅として設けられた駅のひとつが鶴見駅だった。他には品川・川崎・神奈川駅があり、いまも同じ場所に残っているのは品川駅と川崎駅、そして鶴見駅だけだ。
と、それほど名実ともに揺るぎない立場にあるにもかかわらず、鶴見駅は不遇だ。東海道線が素通りしてしまい、京浜東北線しか停まらない。ついでに言えば、鶴見駅の向かいにある京急鶴見駅にも快特や特急は停まらない。150年以上の歴史を持つ30万都市の玄関口としては、いささか扱いが悪いのではないかとすら思う。
「鶴見」が“唯一無二の存在”であることがうかがえる駅の風景
そんなわけで、鶴見駅を歩いてみよう。川崎駅からは京浜東北線に乗ってだいたい5分ほど。乗り入れているのは京浜東北線に加えて臨港部の工業地帯に伸びる鶴見線。鶴見線のホームは京浜東北線の橋上コンコースから直結する高架のホームだ。つまり、半ば独立した路線といっていい。
また、鶴見駅にホームは持たないものの、東海道線や横須賀線の線路も通っている。ちょっぴりマニアックな話になるが、横須賀線は東海道線とは別のルート、すなわち“品鶴線”と呼ばれる武蔵小杉経由のルートを走る。それが再び東海道線に合流するのが鶴見駅、ということになっている。