『八重の桜』の低視聴率が話題になっていた頃、作家の小谷野敦が「山本八重の写真が残っているからいけないのではないか」というようなことを書いていて、なるほどニコリともしない貫禄オバサンがむりやり明治の洋装したような写真が、大河オコボレ頂戴本の表紙などになって書店に並んでいると、「綾瀬はるかの実物はこれか」と(違うんだけど)多少テンション下がるものがあった。
幕末維新ごろに写真撮られた有名人で、なんといっても顔がいちばんイイのは徳川慶喜ではないか。大きく切れ長で二重の目、輝く瞳、通った鼻筋に引き締まった口元など、今どきでもちょっとないぐらいの男前。父親の水戸烈公が、七男の慶喜を一橋家に養子に出し将軍にさせようとしたのは、英明であるとかよりも先に「息子、かっこいい……こんなかっこいいんだから将軍にしたい」という気持ちからではないか。
などと言いたいぐらい徳川慶喜のルックスは良い。ではそんな慶喜を本木雅弘が演じた大河は面白かったか、というとそれほどでもなかった。モックンも美形だが、かっこよさの方向性が慶喜とちょっと違うからなあ。
と、思っていたのだけど、顔が似てる似てないはどうでもいいんだということが『西郷どん』を見てたらわかった。
『西郷どん』にも慶喜は出てくる。松田翔太だ。まるっきり似てない(ぶ男ではない)。
しかしだ。徳川慶喜が町人に化けて品川宿で女遊びをしてモテモテとか(暴れん坊将軍かよ)、親の前では別人みたいにイイ子ぶるとか反抗するとか、諸侯の前で毅然とワルぶるとか、西郷に薄情なとこ見せるとか、その裏で「実はいろいろなことを考えてる深い人間なのでは」と思わせるような表情をチラ見せ、とか。これだよ。こういう慶喜が見たかったんだ私は。
同時に、この慶喜を見ているとたまらなく恥ずかしくなってくる。理由は「私が高校生で、徳川慶喜主人公の同人誌つくって小説でも書いたらこんなんではないか」という欲望丸出しな感じがたまらなく恥ずかしい。ありえない設定にチグハグで一貫性のない言動ながら、オタク女子高生の考える「カッコイイ」のみを正義として成り立つ(いや立ってないが)徳川慶喜。
到底正気では見ていられないのだが、「徳川慶喜萌え」としてはとても気持ちがよくわかるのである。今後の慶喜展開がすごく楽しみだ!
▼『西郷どん』
NHK総合 日 20:00~20:45
https://www.nhk.or.jp/segodon/