「やっぱり最終回、『めちゃイケ』みたいに5時間くらいやればよかった」

 石橋貴明がそう悪戯っぽく言った時、見ている僕は本当にそうだよなあとしみじみと思った。『とんねるずのみなさんのおかげでした』は、前身の『みなさんのおかげです。』を含め30年以上続いた歴史に幕を閉じた。その最終回は通常通り1時間の放送。長年の貢献を考えると、大特番を組んでもよさそうなものだが、これは編成の問題というよりも、とんねるず自身の美学によるものなのだろう。

 最後の1時間は、「さいごのうたばん」と題して、番組が生んだ伝説的ユニット「野猿」と第1回ゲストだった松田聖子を迎え、これまでのPVパロディや音楽系コントの振り返り。金と時間と労力がかかったコントは、時代を超えてもやっぱり面白い。思えば、とんねるずはこの世のすべてをパロディにして、おちょくってきた。抜群の身体能力と表現力でホンモノを凌駕するパロディコントこそ、その真骨頂だった。それが見られなくなってしまうのは悲しいが、30年以上にわたって、「楽しくなければテレビじゃない」というフジテレビの精神を貫き、看板を守ってきたのだ。それが移り変わっていくのは仕方のないことだろう。だが、4月から始まるフジテレビの新番組は、事前告知を見る限り目新しさはほとんどない。時代に合わせているといえば聞こえがいいが、ゴールデンタイムはもちろん、深夜帯でも“時代を先取るニューパワー”を感じないのは何とも寂しい。

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松田聖子(中央)と、女体盛りの刺身を食べる石橋貴明(左)、木梨憲武(右)

 番組の最後は、自身のヒット曲「情けねえ」をとんねるずがフルコーラスで歌った。この曲も元々は、長渕剛のパロディと言われているが、いまやそんなことも感じられぬほど普遍的な名曲になった。「みんな時代のせいだと 言い訳なんかするなよ~自由が泣いている」というフレーズが、今こそ心に響いてくる。

 二人は最後の歌詞「この国を 滅ぼすなよ」を「バラエティを 滅ぼすなよ」に、「この国を おちょくるなよ」を「フジテレビを おちょくるなよ」に変えて歌った。何かと視聴者からおちょくられるように批判にさらされるフジテレビ。だが、フジテレビを本当の意味で「おちょくっている」のは誰なのか。二人の言葉は、楽しいことを全力で生み出してきたかつてのフジテレビを丸ごと否定するかのような今のフジテレビに向けられているような気がしてならない。

©文藝春秋

▼『とんねるずのみなさんのおかげでした』
フジ 木  21:00~21:54
https://www.fujitv.co.jp/minasan/