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《ガチンコ勝負》麻生太郎が蛇蝎のように嫌う石破茂は有力候補になれるか? ポスト岸田は“あの男”がカギを握る

《ガチンコ勝負》麻生太郎が蛇蝎のように嫌う石破茂は有力候補になれるか? ポスト岸田は“あの男”がカギを握る

赤坂太郎 特別編

2024/01/16
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捜査の結果次第で大型補選に

 4月退陣論の背景には、前衆院議長・細田博之の死去に伴う島根一区補選が4月16日に告示、28日に投開票される政治日程も大きい。東京地検の捜査次第で3月15日までに複数の議員が辞職・失職した場合、大型の補選になるのだ。

 そうなる前に、新たな「顔」を選ぶべきだという声が党内で説得力を持つのは当然である。仮に岸田政権のまま大型補選に突っ込めば、苦戦は火を見るより明らかだ。惨敗すれば、結局は岸田の進退に直結する。

 だが、自民党にとって頭が痛いのは、東京地検の捜査自体が、政局の変数になっていることだ。特捜部は安倍派議員を数十人規模で事情聴取するために、全国から応援の検事を集めたが、1月下旬の通常国会召集までに捜査に区切りがつくのか、まったく見えない。

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 派閥の会計責任者による不記載・虚偽記入を立件したとしても、肝心の国会議員がおとがめなしでは、今度は検察庁が国民の信頼を失うことになる。安倍派幹部ら議員の立件が難航すれば、捜査は短期間では終わるまい。とはいえ、国会の会期中に議員に対する事情聴取を続ければ、国会審議の妨害と非難されかねない。6月の閉会を待つならば、捜査は長期化してしまう。

 自民党としては、岸田が退陣するなら裏金問題の責任を一身に背負って去ってもらうことが望ましい。衆院議員の任期は折り返しの2年を過ぎ、新政権が心機一転、高い支持率で始動できれば、解散・総選挙の好機になる。新政権が裏金問題を引きずるわけにはいかないのだ。

 こう計算すれば、捜査に一定のメドが付くまでは、岸田に首相の座にとどまってもらう必要がある。

 では、いつ捜査に区切りがつくのか。何人の議員に司直の手が伸びるのか。永田町はその行方を見守り、その間はレームダックと化した岸田政権が超低空飛行を続けるという異常な政治風景が広がる。

 すでに岸田政権には国民の負担増になる政策を進める体力は残っていない。自民、公明両党が23年末に決めた与党税制改正大綱では、子育て世帯や企業への減税策が並び、防衛増税の開始時期は決定できなかった。

石破茂元幹事長 ©時事通信社

 岸田がこれ以上、政権運営を続けること自体が政治停滞であり、長期化するほど社会保障制度の維持をはじめとする重要政策の推進は難しくなる。こうした正論を、空気を読まずに吐く政治家の筆頭格が、無派閥の元幹事長・石破茂である。

 石破は23年12月11日のBSフジ番組で、岸田の進退について「予算が通ったら辞めるというのはありだ」と述べた。この時点で党内の多くの議員が岸田の4月退陣を思い浮かべてはいても、公の場で口にしてはいなかった。それを先頭切って語る書生っぽさが石破の個性だ。

脱派閥で名乗りを上げた石破

 ある党幹部は石破の発言を「次の首相はオレということだな」と受け取った。岸田政権が派閥政治の悪弊で倒れるなら、ポスト岸田のキーワードは「脱派閥」になる。脱派閥を体現できる有力議員が石破なのだ。

 石破はかつて自身の派閥を率いたが、20年9月の総裁選で敗れ、派閥会長を辞した。その後、石破派は求心力を失い、人数も十数人に減った。21年末にかけもち可能な議員グループとし、事実上、解散した。

 石破がカネ集めに疎く、子分の面倒見が悪かったから、派閥を維持・拡大できなかったと言ってしまえば、それまでだが、派閥政治の限界を知り、自ら決別した議員と評することもできる。加えて知名度は抜群に高く、世論調査の「次の首相」ランキングでも常にトップを争う。

 石破グループでは久々のチャンス到来に「今は余計な発言をせずに自重してほしい」「いや、堂々と正論を唱えてこその石破茂だ」といった相反する意見が飛び交っている。

 石破の弱点は党内の議員に人気が広がらないことだ。自民党が政権を失う前夜の09年7月、首相だった麻生に現職の農水相でありながら、財務相だった故与謝野馨とともに早期退陣を直言したことから、麻生には蛇蝎のように嫌われている。

 岸田退陣への言及についても「やはり石破は皆が苦しい時に後ろから鉄砲を撃つ」(中堅議員)と評判は芳しくない。政策には通じているが、オタク気質で細部に入り込みすぎる。大局を見失わないかとの懸念も付きまとう。

 石破が次期総裁の有力候補になれるかどうかのカギを握るのは、同じく無派閥の前首相・菅義偉だ。(文中敬称略)

石破茂氏が次期総裁の有力候補になれるかどうか、カギを握るのはこの政治家 Ⓒ文藝春秋

本記事の全文「ポスト岸田は菅対麻生のガチンコ勝負 赤坂太郎 特別編」は、「文藝春秋」2024年2月号、および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

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