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内房線のホームで発車メロディーとして流れる童謡「証城寺の狸囃子」は、4番線には流れなかった。ディーゼルカーは北へ向かって走り出し、すぐに右へカーブして内房線と分かれると、木更津郊外の住宅地と平坦な田園風景がずっと続く。
7時43分に到着した横田は、久留里線内に2駅しかない有人駅(もう1駅は久留里。他に馬来田が簡易委託)。ほぼ同時に上り列車も到着して、小さな駅で上下の列車がすれ違う。駅の裏手は乾いた冬の田んぼが広がっていて、東京近郊区間内とは思えないローカル線の光景だ。
2駅先の馬来田には、列車行違い用の反対ホームが撤去されずに残っている。32年前に来たときには使用されていた。
木更津~久留里間の列車の運行本数は当時も今も1日17往復で変わっていないのだが、駅員が引き上げて簡易委託化された平成7(1995)年に反対ホームが使用中止となり、線路が撤去されたという。久留里線の合理化策は、その頃から少しずつ進められてきたのだ。
線内全駅でICカードが使えない
ずっと平地だった車窓に、前方から車窓左手にかけて小高い丘陵が迫り、左右へカーブを繰り返した先に久留里駅が現れた。8時11分着。3両目の車両はホームからはみ出して、ドアが閉め切られている。ここで約半数の客が下車した。
大正元(1912)年に建てられたという古びた久留里駅舎には駅員が配置され、自動券売機も設置されているが、SuicaなどのICカードで直接乗車することはできない。そもそも久留里線の全駅でICカードが使えないのだ。