そのため、木更津ではSuicaで自動改札を通らないよう注意しないといけない。終点の上総亀山など無人駅から乗るときは、車掌から現金払いで切符を買うか、ワンマン列車の場合は下車駅で精算することになる。
このような機械化への非対応措置は、久留里線の近い未来の危うさを感じさせる。平成の初め頃、代替道路が未整備という理由で国鉄時代に廃止されなかった深名線(深川~名寄)という超赤字ローカル線を引き継いだJR北海道は、他線区で導入が進んでいたワンマン運転を、旅客が少ない深名線であえて実施しなかった。
それは、将来の運行継続を前提とする施設投資をしないという意味であると受け止められた。実際、深名線は平成7(1995)年に廃線となっている。久留里線で同じことが起こらないという保証はない。
久留里を出ると線路際の草の丈が急に高くなり…
久留里を出ると、線路際に生い茂る草の丈が急に高くなった。平坦だった線路は軽い上り勾配になり、単調だった田園風景ばかりの車窓が少しずつ変化し始めた。
次の平山では旅客の乗降はなかったが、上総松丘では若い女性客9人がいっせいに下車。迎えに来ていたらしい自動車に乗り込んでどこかへ走り去った。同じ勤務先だろうか。
この駅にも、撤去された反対ホームの跡があった。現在、久留里~上総亀山間では列車の行違いはできない。それで十分まにあうのだろう。
上総松丘の先で、トンネルを2つ通過する。平地が多い久留里線沿線で、トンネルがあるのはこの1区間だけ。鬱蒼とした雑木林の間を走り、車窓に沿って流れる小櫃川は山間部の渓流の様相を呈してくる。房総半島は海のイメージが強いが、内陸に入ればそれなりに山深くなることを、この3.9kmの1区間の車窓が教えてくれる。