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小5で生き別れた母が死去、手紙には「会う資格がない」と…児童養護施設出身の戦隊俳優・古原靖久(37)が語る「家族」への想い

古原靖久さんインタビュー #3

2024/01/27
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古原 でもそれでずっと何年も心を病んでしまうくらいだったら、少しだけ勇気を出してその場を離れる決断をするのも大事なことだと思うんです。これは会社を辞められない人にも当てはまりますけど、別にそこから離れることが負けでもないし、逃げでもない。

 家族や他の人に対して責任を感じてしまうと思いますが、僕は「別にこの人が抜けても代わりがい(あ)る」ことのほうが多いと考えていて。責任感が強いからこそ、行動できない人が多いわけだし、人ってもっと自由に生きていいと思うんです。

 家族に対してもどこか「自分がそばにいてあげないと」とか「育ててもらった恩に報いないと」という気持ちになることはあると思いますが、どうしても苦しいなら一度「付き合わない」決心をしてみる。

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 いつかまた付き合わないといけない時が来るかもしれないけれど、一度距離を置いてみることで、自分や相手の意識が変わることもあるし、関係性が変わることも多い。そういう風に「離れて」生きてみるだけでも、生活ってすごく楽になると思います。

 

虐待をしてくる親や相手のためにも、一度離れること大事

――日本的な価値観で言うと「家族と距離を置く」ということに対してすごく抵抗を感じる人が多いような。「育ててもらったのに恩をあだで返すの?」という目を向けられることもありますし。

古原 ありますね。でも僕は「私には私にしかわからない事情があるし、あなたにはあなたにしかわからない事情がある」という考え方に尽きると思っています。私が生きやすい方法は私にしかわからないと言いますか。そういう心の逃がし方をしてあげてもいいのかなと。

 例えば、虐待をしてくる家族と距離を置くことに対して、罪悪感を持つのではなくて「私が離れることによって家族が変わるかもしれない」と少しずつ気持ちを変えていったり。もしかすると「一緒にいるから」そういう関係性になってしまうのかもしれないじゃないですか。だから自分だけじゃなく、虐待をしてしまう親や相手のためにも、一度離れる。

――離れるための理由を作るというか、大義名分みたいなものがあるだけでも自分が救われますよね。

古原 そうです。離れることに対して、マイナスではなくプラスの面を見つける作業が大事。「私が家族と距離を置くことで、こんな良いことがあるんだよ」というのを見つけて、自分に言い聞かせることで意志が強くなると思うので。

 そうやって自分が生きやすくなるための大義名分を作ってあげると、心が楽になるんじゃないかな、と僕は思っています。

撮影=深野未季/文藝春秋

小5で生き別れた母が死去、手紙には「会う資格がない」と…児童養護施設出身の戦隊俳優・古原靖久(37)が語る「家族」への想い

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