『少年ジャンプ』でも…
哲学者のフリードリッヒ・ニーチェは、著書『ニーチェ全集8 悦ばしき知識』( 信太正三訳、ちくま学芸文庫)の中で「星の友情」ということを言っています。
「星の友情。――われわれは友達であったが、互いに疎遠になってしまった。けれど、そうなるべきが当然だったのであり、それを互いに恥じるかのように隠し合ったり晦(くら)まし合ったりしようとは思わない。われわれは、それぞれその目的地と航路とをもっている二艘の船である。(中略)われわれの使命の全能の力が、ふたたびわれわれを分かれ分かれに異なった海洋と地帯へと駆り立てた」
「星の友情」は、思想的に袂を分かった音楽家のワーグナーについて書かれたもので、「互いに地上での敵であらざるをえないにしても、われわれの星の友情を信じよう」とまとめられています。場合によっては敵対関係になってしまうかもしれない友であっても、訣別した後も心の奥底でつながり合っている、という友情関係です。二度と会うこともなく、会話を交わすこともないかもしれない、しかし互いに尊敬し合い、関係を崇高な思想にまで高めようというのです。
直接的なコミュニケーションもない、究極の淡交ですが、それでも心を通じ合わせることはできるのだ、とニーチェは述べています。『少年ジャンプ』でも、ライバル同士、距離がある関係ながら、お互いを意識し、リスペクトし合うという関係がよく描かれます。敵対し合う中でも、互いを認め合う気持ちが芽生えることもあるのです。