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〈「オソ18」駆除か 牛66頭襲う雄ヒグマ 7月に釧路町で〉

 膠着状態に陥ったまま、迎えた2023年8月21日夜、北海道新聞の速報により、事態は急変する。記事は7月に釧路町でOSO18と知られぬまま駆除されたヒグマが実はOSO18であったことが3週間後のDNA検査により判明したことを伝えていた。

OSO18が捕獲された釧路町オタクパウシ

「これ、番組になるのかな」

――OSO駆除の一報はどういう状態で知ったのですか。

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有元 今思い出したんですけど、そのとき自宅でちょうど『怪物』(Netflixで配信された韓国ドラマ)を観ていたんです。そうしたら入院中の藤本さんから〈OSO捕獲されました〉〈獲ったのは我々じゃありません〉とLINEで連絡が来たんですよね。すぐに電話すると、藤本さんも「よくわからない」と。「明日記者会見があるから、ニュース出すのは待って」と言われて。すぐ山森さんに電話しました。

山森 僕の方は、バスの運転手が不足しているというテーマで北見に取材にいった帰りで、最終の特急列車で札幌に帰っているところでした。で、有元から駆除されたらしいと聞いて、被害に遭われた農家さんや、対策に追われてきた役場の人たちのことを思うと「よかったな」と思うと同時にやっぱり呆然としましたね。

 1年半追いかけてきて、結末はどうなるのか、ほぼ毎日想像してきたんですけど……実は3週間前に駆除されていた。「もうOSOがこの世にいない時間を僕は何も知らずに3週間生きてきたんだな」と。そのことにすごく呆然としちゃって。

有元 僕もその日は寝れなかったです。ベッドに入っても、いろいろ考えちゃって。どんな形であれ、OSOが駆除された以上、番組はやらないといけないんだけど、既にお話しした通り、夏の間、ほぼ何も撮れてないわけです。罠を仕掛けた、ダメだった、というところしか撮れてない。「これ、番組になるのかな」というのはすごく思ってました。

山森 有元のいう通り、番組になるか全然見えないんですが、僕は「とにかく明日現場に行かないと後悔するな」と思いました。取材させてもらってきた人たちがこのことをどう受け止めているのか、その瞬間しか撮れないものがあるはずですし、何があったのかわからないからこそ、行かなきゃいけないと。それで翌日のアポを調整して、朝イチの便をとって、ハンディカムの準備をして、とにかく行こうと。

有元 3週間も経ってるし、死体もないらしいし、誰が獲ったかわからない。でも山森さんに、「そうは言っても、藤本さんや赤石さんがその現実をどう受け止めているかを撮れば、何かにはなるんじゃないか」と言われて、「じゃあとにかく赤石さんのところに行こう」という気になれたんですよね。