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山森 残雪期のスノーモービルなどを使ったOSOの探索の様子を撮影しながら、有元が標津町の春期管理捕獲(北海道が2023年に改訂した制度。市街地近くでのクマの出没を抑えることを目的として、冬眠中の「穴狩り」や親子グマの駆除を解禁した)に行くハンターの赤石正男さんにくっついていったり。

藤本靖氏「ほんとすごいシカだわ。やっぱり捕ったらだめなところには集まってんだわ」(厚岸町西部の上尾幌国有林)

――それで「NHK、なかなか根性ある」という話になったと聞きました(笑)。

有元 必死でした(笑)。ここで根性見せないと、いつまでも信頼してもらえないだろうな、と思って。危険だということも事前に言われていたので、「絶対に足手まといにならないぞ」と。赤石さんに置いていかれたら終わりだと思って、死ぬ気でついていきました。

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OSO18に殺された最後の牛

 この残雪期でもOSO捕獲には至らずに、2人は標津と札幌を行ったりきたりしている状態だった。

 そして2023年6月24日、この年、最初のOSOによる襲撃が起きる。現場は上茶安別の牧場で、生後14カ月の乳牛1頭が殺された。腹を傷つけられ内臓が見える状態で、右前足が通常とは反対側に曲がっていたという。結果的にこれがOSOによって殺された最後の牛になった。

有元 実はこの前日、札幌で藤本さんと飲んでたんです。

山森 例年、OSOが牛を襲い始めるのは6月下旬から7月頭にかけてなんです。それで今年もそろそろ現地に向かうか、というタイミングでちょうど藤本さんが札幌に来られたんで、作戦会議をしてたんですが、ちょっと予想より早く被害が……。

――常に人間の裏をかいてくるOSOらしいですね。

有元 そうですね。それで藤本さんたちが襲撃現場付近に再び「くくり罠」を仕掛けるというので、我々もまた現地に行って。

――この場面は後に番組になっていますが、OSOは「くくり罠」のわずか30センチ横を通っているんですよね。あれだけ広大なエリアでOSOの移動ルートを最終的にそこまで絞り込んだのは、さすがだと思いました。

山森 そうなんですよ。その場の状況に応じて常に最善の手段を選んで、確実にOSOに迫っている。藤本さんと赤石さんのチームだからできることだと改めて感じました。

「OSO18特別対策班」のリーダーをつとめた藤本靖氏(中央)

「いつまでクマやってるの?」

 だがOSO捕獲まであと一歩に迫った直後、藤本に悪性リンパ腫が見つかり、入院を余儀なくされる。必然的に「OSO18特別対策班」の活動も停滞し、NHK取材班としても動きようがない状態になってしまった。

山森 そうなってくると、NHKの中で「いつまでクマやってるの?」という空気もちょっとは出てくるわけです(笑)。はっきりとそう言われたわけではないですが、そろそろ違うことをやったら、という。だからこの時期は「ゴールの見えない撮影をどこまで続けるのか」という悩みはありました。

有元 何より藤本さんの体調も心配でした。「これは、OSOどころではないのでは」と思ったり。