「たい肥の山の奥に埋もれて、骨から湯気が出ていました。最初に見つけたのは腰椎の骨だったんですけど、こうやって持ち上げると持っていられなくなるくらい熱いんです。生命力が残っている感じがして……OSO18の存在を最も感じた瞬間でした」
そう語るのは、NHK札幌放送局のディレクターの有元優喜である。同僚ディレクターの山森英輔とともに制作した『OSO18 “怪物ヒグマ”最期の謎』(NHKスペシャル、2023年10月15日放送)は、大きな反響を呼んだ。既に処分されてこの世にはないと思われていたOSO18の骨を、有元が解体所にあった「たい肥」の山の中から4時間かけて見つけ出した。
2023年8月21日夜、OSO18が駆除されていたと北海道新聞が速報したとき、NHK「OSO18取材班」の2人は一体何を思ったのか。(全2回の2回目/#1から続く)
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「NHK、なかなか根性ある」
有元と山森が密着取材を続けた「OSO18特別対策班」が、OSOを捕獲するチャンスは1年の中で大きく分けて3回あった。最初は冬眠明けのクマの足跡が追える残雪期、次にOSOが牛を襲い始める夏場、そしてデントコーン(飼料用トウモロコシ)を食べにくる秋である。
デントコーンはクマの大好物だが、OSOも例外ではなく、秋になるとデントコーン畑に通ってきていた。そこで藤本らは特別な許可を得て周辺に「くくり罠」を仕掛け、一度はOSOに罠の中に踏み込ませることに成功したものの、罠の不具合で逃げられてしまう。こうしてNHK取材班がOSOを追いかけて1年目となる2022年が終わった。
――デントコーン畑への道に「くくり罠」を仕掛けるところまでを、2022年の11月にNHKスペシャル『OSO18~ある“怪物ヒグマ”の記録~』として放送しています。
山森 夏ごろの時点で、OSOが捕獲されたらもちろん番組の形にするとして、最後のチャンスである秋、デントコーンの時期まで獲れなくても、一度番組にしようという話はしていました。
――この頃には、「OSO18特別対策班」リーダーの藤本さんたちとの信頼関係というのは、かなりできてきたんですか?
有元 そうですね。ただ1年目はやっぱりほとんど密着はできてなくて、少しできるようになってきたのは、年が明けて2023年になってからですね。