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「連れ去りだ!」夫から激怒のLINE

妻と子どもが突然姿を消したのだから、夫は当然激怒する。「第三者を入れて話し合いを」とTさんはすぐにLINEを送ったが、夫からは「連れ去りだ!」と怒りのこもった返事が返ってきた。

Tさんの恐怖心はますます募る。警察にも相談し、自分に近づかないよう夫への警告も出してもらった。

離婚に向けて弁護士を雇い、まもなく裁判所で調停がスタート。だが互いの主張は全くかみ合わなかった。

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Tさんが「離婚成立がまず先で、夫が少しでも言動を反省すれば息子との面会交流を考える」と言えば、夫は「そもそも子どもを連れ去ったことが問題で、元いた場所に息子を戻した上でなら考える」との堂々巡り。

膠着(こうちゃく)状態が半年も過ぎたころ、裁判所から夫と息子との試行面会が提示された。Tさんは反発するも、会わせないわけにはいかない。Tさんの担当弁護士の事務所で30分間、夫と息子が会うことが決まった。

「連れ去り」恐れ、護衛は5人

面会交流へのTさんの警戒ぶりは徹底していた。Tさんと彼女の母、弁護士の3人が立ち合い、すぐ隣の部屋には知人男性2人が待機。何かあればすぐに駆け付けられるようにしていた。なぜなら、夫による息子の「連れ去り」を恐れたからだ。

「夫の立場に立てば、子どもと次いつ会えるか分からない、親権も取れないだろうという絶望的な状況に置かれていると思いました。だから追い詰められて息子を連れ去ろうとするかもしれない。会わせるなんて、そんな危険なこと絶対無理。私が息子を連れ去られた立場だったらって考えると、より恐怖が増すんです」とTさん。

果たして心配したような問題は起きず、面会交流はスムーズに終わった。「息子に会えないことはない」との安心感を得たのか、夫は徐々に冷静さを取り戻したようだった。

支援者との出会い

その後、裁判所での取り決めで月1回の面会交流を行うことになったものの、とても2人で直接やり取りができる状態ではなかった。支援組織を探し始め、そのなかで面会交流時のTさんの同席や場所などの希望に対応してくれる団体に仲介をお願いすることにした。離婚後の共同養育に取り組む団体だった。