1ページ目から読む
6/6ページ目

離婚後の子どもの養育について検討している法制審議会の部会は昨年12月、共同親権の導入やその例外規定、法定養育費制度の創設など、家族法制の見直しに向けた要綱案の素案を示した。今年1月にも要綱案を取りまとめ、政府は早ければ2024年の通常国会に民法改正案を提出する見通しだ。法整備とともに、Tさんが指摘するような、離婚後の親子・元夫婦が関係を再構築するのを後押しする支援・制度を強化していってほしいと思う。

元夫は「子育てプロジェクトのメンバー」

元夫との新しい関係をスタートさせたTさん。今はどんな状況にあるのだろう。

「一緒にいた時はいがみ合うことが多かったけれど、離れて暮らす今は『子どものために』と、互いが純粋に考えられるようになった」とTさんは語る。

ADVERTISEMENT

怒りやわだかまりが薄れてくれば、自分も心が楽になり、何かをしようとの意欲も湧いてくる。息子と元夫の仲は良く、「お父さんと水族館に行きたい」などと息子も会うのを楽しみにしているようだ。

「もし元夫と息子を会わせない、との判断をしていれば、そのことで生じる子どもへの『責任』を自分は背負い切れたのだろうか」と時折思う。

今でも元夫とは時々険悪な雰囲気になる。その時には「役割分担」と「相手に求めすぎないこと」を意識する。「ビジネスライク」と思えばできるはず。

子どもを育て、好きなことをさせてあげるにはお金もかかる。息子は元夫の幼い頃とそっくりで、国旗が好きなど似ているところもたくさんある。進路などで相談したくなる時もきっと来るだろう。幸い元夫も「息子と一番接し、一番よく分かっている」と、Tさんの見方を尊重してくれるようになった。

「元夫は子育てプロジェクトのメンバーみたいなものですね」と笑顔で話すTさん。今の心配は、元夫が将来再婚した場合、子どもにどう伝えたらいいのか、ということ。その時は1人で抱え込まず、また誰かに相談したいと思っている。悩み、助けを頼りながら今にたどり着いたTさんは、何かが吹っ切れた、すがすがしい表情をしていた。

藤岡 敦子(ふじおか・あつこ)
ジャーナリスト/映像ディレクター
栃木県出身。新聞記者を経て英国・ブラッドフォード大学大学院平和学研究科国際政治・安全保障課程、及びシティ大学大学院ジャーナリズム学科で修士号取得。テレビ局でディレクターとしてニュースや討論番組を担当するほか、ウェブや雑誌でも執筆している。野宿者や難民問題、ハーグ条約、DV、虐待、出自を知る権利、東日本大震災被災地など社会的テーマを中心に取材。