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なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

昼、夜、朝に終点まで往復してみた

2024/02/04
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 グリーンスタジアム前停留場の周辺はスナック菓子のカルビーの工場や住宅関連機器の長府製作所の工場がある。最近、カルビーは増床を決めたという。その他の企業も宇都宮駅まで走らせていた通勤バスをとりやめる動きがある。ゆいの杜にあるルートインホテルは宇都宮駅や工業団地への無料送迎バスを終了した。通勤だけではなく、沿線の企業にも経済効果が現れているようだ。

工業団地内は道路も広く、敷地に緑も多い

 工業団地といっても緑が多く環境に配慮されている。田中角栄は「日本列島改造論」で、太平洋ベルトに集中した工業を地方に分散させるべきと書いた。きっとこういう場所を想定したのではないかと思う。

 工業団地を通り抜けて高架区間に入り、右へカーブするとルートインホテルが現れる。ここから先は住宅開発された広大なニュータウン「ゆいの杜」エリアだ。停留場は「ゆいの杜西」「ゆいの杜中央」「ゆいの杜東」の3つもある。清原工業団地と芳賀・高根沢工業団地に挟まれたところで、ライトライン実現の見通しが立つと人口が急増したという。郊外型ロードサイド店舗も多く、工業団地の雇用とセットで発展する街かもしれない。

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線路は道路の中央にあり、横断歩道と歩道橋が

 宇都宮市から芳賀町に入って、芳賀台停留場から芳賀工業団地エリアだ。ほとんどの事業所が本田技研工業と関連企業のようだ。本田技研工業の公式サイトによると、生産拠点ではなく技術開発拠点になっていて、本田技術研究所の所在地として紹介されている。

 工場街が途切れて、田園地帯。電車は坂道を下って地上に降りると見せかけて、また急勾配を上がった。まっすぐフラットに造れば良さそうなモノだけど、将来はそこの部分に停留場を増設できるかもしれない。かしの森公園前停留場に到着。前方から宇都宮駅東口行きがやってくる。

かしの森公園前停留場。ここから芳賀・高根沢工業団地

 かしの森公園が左側の車窓に続き、右側は本田技研工業の建物群だ。一直線で、ドライブしても気持ちよさそうな道路。クルマがスイスイ走っている。こちらは時速40kmだから、残念ながら追い越されてしまう。自動車と同じ速度で走らせたい。

 終点の「芳賀・高根沢工業団地」停留場に着いた。本田技研工業の北門の真横だ。電子地図を航空写真モードにすると、大きなオーバルコースと内側のオフロードコースが見える。そして多数の駐車場も。従業員が1万人居るとすれば、約1万台の駐車場が必要になるわけだ。ライトラインが開業するまで、駅まで送迎バスを運行していたそうだ。

 線路は道路の中央にあり、横断歩道と歩道橋がある。自動車の通行は少ないけれど、横断歩道に信号機がないから、歩道橋の方が安全で、乗りたい電車を逃さない。この停留場のさらに北側が高根沢町で、葡萄園や御料牧場がある。もっと北へ行くと、宇都宮線と烏山線が分岐する宝積寺駅だ。

芳賀・高根沢工業団地に到着