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なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

昼、夜、朝に終点まで往復してみた

2024/02/04
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ライトラインがなければ駐車場がパンクしたかもしれない。

 駅前のビジネスホテルに泊まり、朝の様子も見る。宇都宮駅東口停留場は大勢の通勤客が待っていて、乗客整理の長い列ができている。8分ごとに電車が来るならば、次の電車を待つ。これはもうライトラインに乗る人の間で習慣になっているようだ。しかし大混雑にはならないようで、これなら私がお邪魔しても良いだろう。7時36分発の電車に乗った。この電車の芳賀・高根沢工業団地着は8時24分。本田技研工業の始業が8時半だとすれば、間に合う最後の電車である。

 2番のりばから発車する電車と、1番のりばに到着する電車がすれ違う。これも朝夕通勤時間帯だけの風景

 大混雑よりちょっと空いた電車は清陵高校の生徒もみかける。もう少し遅くなると宇都宮大学や作新学院大学の学生も乗ってくるだろう。市街地区間でも乗る人が多く、扉がセンサーに反応して閉じない。運転士が「車内へお進みください」という。大都市の通勤電車と同じ現象だ。ワンマン運転だけど、車外と車内にカメラがあって運転席に表示されている。日曜日に乗ったときに、ICカードリーダーをタッチしないで降りる客に対して、運転士が呼びかける場面もあった。収受もしっかり対応している。

 宇都宮大学陽東キャンパスで30人くらい降りたように見えた。通学だろうか、あるいはベルモールへの通勤だろうか。そして車内の混雑度は変わらない。そして平石から数人の乗客がある。ここは電車の基地とライトラインの本社があり、降りるところだけど乗ってくる。パークアンドライドを活用しているようだ。駐車場を拡張予定という掲示があった。清陵高校前で10人ちょっと降りて、車内が見通せるようになった。

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 開業から約半年で、利用方法はよく周知されているようだ。通勤通学客だから慣れていることもあるだろうし、僅かばかりの現金利用客も滞りなく降りていく。交差点で長時間停車するときに、運転士が必ず「小銭のない方は今のうちに両替をお願いします」とアナウンスしていた。3往復目の乗車だけど、いまのところきちんと定時運転である。

 なんども上り電車とすれ違う。あちらは座席がすべて埋まり、数人が立つという状況だ。宇都宮駅東口行きプラットホームも電車待ちの人が多い。こちらの電車は降りる一方だ。芳賀工業団地内の「かしの森公園前」停留場で3分の1ほどの乗客が降りていく。つまり、もっとも混んでいる区間の3分の2ほどの人々が終点まで通勤した。

工業団地は建物より駐車場の延べ面積のほうが大きいかもしれない
芳賀・高根沢工業団地停留場で折り返す朝の上り電車から。人を入れずに車内を撮れるタイミングはとても少ない

 芳賀・高根沢工業団地停留場の歩道橋に上がると、昨日は暗かった辺りも見通せる。左手の平置き駐車場は奥の方まで満車状態だ。これだけ広いと先着順で奥から停めるのだろうか。それとも職場の階層によって決まっているのか。そんなことを邪推しつつ、本田技研工業の北門を眺めたら驚いた。昨夜は工場の設備だと思っていた大きな建物は、3階建てか4階建ての立体駐車場だった。羽田空港の駐車場ビルくらいの収容量かもしれない。それが2棟。

 ライトラインのおかげで自動車通勤が減るというよりも、ライトラインがなければ駐車場がパンクしたかもしれない。ライトラインがあって本当に良かった。

なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

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