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なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

昼、夜、朝に終点まで往復してみた

2024/02/04
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 宇都宮駅東口からここまで、ベルモールのある「宇都宮大学陽東キャンパス」で20人ほど降り、その他の駅でも多少の乗降があったけれども、満席しかも立ち客も多いまま到着した。降りた客は電車や停留場の写真を撮ってそのまま折り返す。そう。今日は休日で、しかも昼過ぎ。通勤客はいなくて、ライトラインに乗りに来た人ばかりというわけだ。休日はだいたいこんな感じだそうで、これはライトライン側もうれしい誤算だったようだ。平日の利用客は目論み通り、休日は予想の3倍近くの利用があると報道されていた。

あらためて夜の通勤時間帯に乗ってみた

 ライトラインは工業団地の通勤手段が主な目的だ。ならば実際に通勤時間帯を見てみたい。そこで、平日に行ってみた。2024年1月16日の夕暮れに宇都宮駅東口から「芳賀・高根沢工業団地」へ。通勤とは逆方向で、さすがに乗客が少ない。制服の生徒さんが何人かいて家路に向かう。それでも「宇都宮大学陽東キャンパス」から乗ってくる若い人や親子、お年寄りがいて、途中の停留場で降りていく。

 ゆいの杜エリアを過ぎたら乗客は私ともう一人の男性だけだった。それでも電車はすべての停留場に停まって扉を開ける。乗降がない停留場もある。これは興味深い。各地の路面電車は乗降がなければ停留場を通過する場合もある。ところがこの電車は始めから降車ボタンがない。従来の路面電車とは違う。ライトレールは新しい乗りものだ。

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 空いている車内を見渡せば、紙の広告も一切ない。中吊りも、窓上のポスターもない。ドアステッカー広告もないから、車窓を妨げない。広告はデジタルサイネージだけ。だから車内の色合いもスッキリと落ち着いている。ルートインの広告もあった。送迎バス廃止で浮いた予算で営業活動というわけだ。

ルートインの車内サイネージ広告。広告主はほかに居酒屋、住宅、電設会社、オープンスクエア(宇都宮市)、ライトラインの乗車案内が2件

 芳賀・高根沢工業団地前に着くと、男性は本田技研工業北門へ向かった。折り返す人は私だけだ。しかし寂しくはない。プラットホームには列車を待つ人々が数人いる。座って帰るために、前の電車を見送っていたようだ。この時間帯の運行間隔は約8~10分。少し寒いけれど待てる時間だ。発車の時刻が近づくと、歩道橋の左右から人々が集まってきた。

 帰りは最後部に立って先頭方向を見る。ここから各停留場の乗降の様子がわかる。芳賀の工業地区からどんどん乗ってきて、ゆいの杜エリアで少し降りて、清原工業地区でまた乗って満員電車だ。物見遊山で乗ってしまって申し訳ない気持ちになった。「宇都宮大学陽東キャンパス」ではベルモールに行く人と帰る人の入れ替わりがある。市街地でも少し降りる人がいたけれど、満員のまま宇都宮駅東口停留場に到着した。

宇都宮駅東口停留場。ピークタイムはプラットホームの両側を使う