他方、鹿島建設爆破事件(1974年)などのテロ事件の共謀・実行の事案で見るならば、当時21歳の若者に過ぎなかった桐島聡さんが果たした役割は限定的であることを鑑みて逮捕起訴されたとしても実刑15年程度で出てこられたのではないかとも見られています。
そもそもが、戦争中に日本に強制連行された中国人が悲惨な労働環境に耐えかねて蜂起し400人以上が亡くなった花岡事件(1945年)を理由に鹿島建設への爆破を仕掛けたことが背景にありますが、他の事件も含めて桐島聡さんが起こした事故で直接亡くなった方はおられません。そうであるならば、30代後半にはシャバに出られて一般の国民として暮らしていけたはずの桐島聡さんからすれば、人生の最後まで不自由であまり裕福ではない暮らしを強いられてきたのは結果的に相応の罰を「セルフ終身刑」的な形で受けたことにもなります。
組織の支援や手引きはなかった可能性
さらに、桐島聡さんが勤務していた工務店関係者によれば、働いていたウチダヒロシさんがテロリストとして指名手配されている問題人物であったとは20年以上仕事をしていながらまったく気づいていなかったとのことで、犯行に関わる話を聞いたことも、疑わしい人物と頻繁に接触している雰囲気もなかったとのことでした。ほんまかいな。これから勤務していた工務店周りや、仕事の出先については当局も追加で状況確認的な捜査は行うでしょうから、新たな事実関係が出てくる可能性はあります。
正直、当局としては完全なる出し抜かれ、大失態という評価でもあるため、無理矢理でもなんらか工務店の容疑をでっち上げて起訴でもしようとするんじゃないかと心配になる面もあります。
ただ、現状では桐島聡さんの逃亡・潜伏生活において、過去に事件に直接関係した組織による支援や手引はこれといって無かった可能性が強いと見られます。つまり、本人も反省してか分かりませんが組織から足を洗い、接触を断ってしまっていたからこそ、警察も藤沢市周辺に桐島聡さんが潜伏しているという情報の入手ができなかった可能性が高いのです。
この工務店(というか、人足屋的な仕事がメインだったようですが)を起用した土木系のジョイントベンチャー(JV)を担当した二次請け建設会社によれば、2015年ごろに行った工事の作業員名簿に確かに「ウチダヒロシ」と思われる人物がいることが分かっています。ただし、一般的にこれらの工事に直接携わる作業員については、昨今は従事者全員の氏名を明記したうえで担当事業者ごとに土木工事保険や請負業者賠償責任保険、労働災害総合保険に加入することが義務付けられています。そうなると、偽名で架空の従業員を工務店が「昔から働いてくれていた、訳アリだけど明るいおっちゃん」として置いておくことは、未必の故意で犯人隠匿に協力したとも扱われかねません。
「謎スマホ」を使っていた?
また、日雇いの現場においては、私ども産業廃棄物業界も特に気にしていることですが、身元不詳の人物が求職にやってくることも少なくありません。しかし、突発で多くの人員を要するような作業では現場長の独断で「よく分かんねえ奴だけどまあいいか」となりやすいのもまた事実と言えます。本当に訳の分からない奴だとスマホもまともに持っておらず、招集もかけられません。日雇いで稼いでいる人ほど、いまや仕事を得るツールであるスマホは文字通り生命線です。
ネット回線はコンビニの駐車場や駅周辺に流れてくる野良Wi-Fiでいいので、変な人はどこからどう入手したか不明なだいたい謎スマホか謎ガラケを持ってるんすよね。