そんな住宅ゾーンは、田畑や雑木林の合間にある。冬だから田畑で何かを耕している様子はないが、地図を見ると田んぼの地図記号が多い。だから、初夏には一面に水が張られ、秋には黄金に稲穂がそよぐ。そんな田園風景を見ることができるのだろうか。
駅の少し南側の一角には、何やら古めかしい神社が。そこに軽快なBGMをながすトラックがやってきて…
駅の少し南側の一角に、皇産霊神社という神社があった。その脇には、「岩沼の獅子舞」の案内板があった。八積駅を含めた一帯は「岩沼」という地域で、1898年に駅が開業したときには岩沼駅と名乗っている。
その地域の獅子舞。案内板を読んでみると、なんと400年以上前から続くお祭りで、千葉県の無形民俗文化財に指定されているという。どんな村にも、というか農業や漁業といった自然を相手にして生計を立てている地域では、特にこういったお祭りは大事に受け継がれてきているものなのだろう。
そして、この神社の境内にやってきたのが一台のトラック。なんだか軽快なBGMをながしている。神社の境内に駐車すると、荷台からあれこれ取り出している。どうやら、移動スーパーらしい。
そういえば、この村を歩いていても、一度とてスーパーなどの類いを見かけなかった。コンビニはいくつかあったが、飲食店もほとんどない。そういう場所だけに、移動スーパーはインフラとして大きな役割を果たしているというわけだ。クルマで遠くのスーパーに行けるならまだしも、そうじゃない人もいますからね。
そんな地域性を感じつつ、さらに歩く。基本的には碁盤の目のように区画整理されていて、そこが一面の田畑になっているのが長生村の風景だ。これまで訪れた村でいうならば、山の中の川沿いの一本道の檜原村とは正反対。むしろ、愛知県の飛島村に近い。飛島村でも工場群ではなく田園地帯のほうだ。
こういう田園地帯は、どこまで歩いていっても風景が代わり映えしないのが難点だ。紙の地図を見ながら歩いていると、目印が少なすぎて自分がいまどこにいるのかがわからなくなってくる。遠くには住宅がずらりと並んでいる一角が見えたり、田んぼの真ん中に立派な消防署が見えたり。
八積駅から歩くこと30分、村役場に到着
こんな田んぼばかりの村の真ん中の消防署、お仕事はあるのだろうか……。と思ったが、たぶん九十九里浜があるから海難事故などで夏場には出番が多くなるに違いない。ちなみに、九十九里浜沿いには有料道路も通っているし、民宿や飲食店なども浜沿いに。それらはだいたい夏場に九十九里にやってくる海水浴客などを当て込んでいるのだと思う。