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 要点の3つ目は、報道で捨象されているその歴史的文脈です。すなわち、イスラエルという国家が入植者による植民地国家であり、パレスチナ人に対するアパルトヘイト国家(特定の人種の至上主義に基づく、人種差別を基盤とする国家)であるという事実です。

 これまでの主流のテレビ、新聞の報道で、「イスラエルは植民地主義的侵略によってできた国である、アパルトヘイト国家だ」といった言葉をお聞きになったことがありましたでしょうか。そうした歴史的事実をしっかりと報道しないことによって、主流メディアは問題の根源をむしろ積極的に隠蔽していると言えるのです。

©AFLO

 最後の一点です。これまでイスラエルは、数えきれないほどの戦争犯罪、国際法違反、安保理決議違反を続けてきましたが、それを国際社会はひとたびもきちんと裁いてきませんでした。イスラエルに対する不処罰、イスラエルのやっていることは不問に付すという“伝統”が国際社会には形成されているのです。

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 これをウクライナと比べてみてください。ロシアによるウクライナ侵攻で、国際刑事裁判所はすぐに動いて、プーチン大統領に対して戦争犯罪の容疑で逮捕状を出しました。

 しかし、「2014年に起きたイスラエルによるガザへの攻撃を、戦争犯罪として調査してほしい」というパレスチナ側の要求に国際刑事裁判所が応えるまで、実に5年もかかっているんです。調査すると決まってからも、まだ棚上げにされていた。そして調査されないまま、ついにまた、こんな出来事が起きてしまった。

 今、ガザでパレスチナ人のジェノサイドを行っているのはイスラエルですが、では、何がそのジェノサイドを可能にしているのかと言えば、この長きにわたる国際社会の二重基準です。

 ジャスティス(公正さ)の基準は、一つでなければいけません。「こっちには適用されるけど、あっちには適用されない」。そんなものはジャスティスではありません。「公正」であるためには、何人にも等しく適用されなければいけない。

 しかし、ウクライナのように、アメリカにとって都合のいい場合は国際法や人権が声高に主張され、メディアもキャンペーンを張り、アメリカにとって都合が悪い場合は、国際法も人権もまったく顧みられない。何十年にもわたる、こうした国際社会の二重基準があり、それを私たちが許してきてしまっているということ、それ自体を問いたいと思います(筆者注1)

注1 2023年12月、南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルをジェノサイドの廉で提訴し、ICJが1月、イスラエルに対しジェノサイドを防止するための暫定措置命令を出したことは、国際社会におけるイスラエル不処罰という悪しき伝統に終止符を打つために、イスラエルが国際司法の場で裁かれる先鞭をつけたという点で大きな意味がある。