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「時間があったので対振り飛車を研究しました」用意周到だった藤井聡太は、最後の最後まで厳しい表情を崩さなかった

「時間があったので対振り飛車を研究しました」用意周到だった藤井聡太は、最後の最後まで厳しい表情を崩さなかった

プロが読み解く第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局 #2

2024/02/24
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いま多くの棋士が戦い方を変えている

 これで「不滅の記録」と言われた大山のタイトル19期連続獲得を抜き、20期と単独1位に躍り出た。タイトル戦の勝率が8割超え。明らかにまた強くなっている。だが他の棋士もめげてはいられない。

藤井聡太王将

 かつて羽生善治という棋士が台頭し、多くの棋士がより強く、より個性を持つようになった。佐藤康光九段が居飛車正統派から力戦振り飛車まで指しこなす大胆な棋風に変えたように。谷川浩司十七世名人や森内俊之九段は、羽生より先に永世名人の資格を得た。また佐藤も永世棋聖の資格を得ている。これはすべて羽生七冠誕生の後のことだ。

 いま多くの棋士が戦い方を変えている。王座を奪われた永瀬拓矢九段は、藤井との朝日杯将棋オープン戦決勝で先手矢倉を採用して勝ち、全棋士参加棋戦で初めて優勝した。永瀬が矢倉を指すのは3年2ヶ月ぶりで、対藤井戦では初めてだ。

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 王将戦の後引きが気になる菅井はしかし、竜王戦1組でその永瀬に勝った。王将戦では1局も採用しなかった中飛車にして、常に低く堅く囲っていた玉を、中段に逃げ出し、その玉をも寄せに生かした。

 豊島将之九段は、師匠の桐山清澄九段直伝のオールラウンダーに戻った。矢倉、角換わり、相掛かりに雁木もと、4つの戦法を使い分け、さらには先手三間飛車や後手四間飛車も指している。大山の孫弟子・佐藤天彦九段などは、もうすっかり振り飛車党だ。

 藤井を倒すべく、棋士たちは変化し、進化するだろう。伊藤匠七段が挑戦する棋王戦、第1局は恐るべき持将棋志向の将棋だった。将棋の結末そのものを変えようとする者もいるのだ。

 絶対王者の長い連覇が続くのか、それを壊す者がやってくるのか。観る将棋ファンには休息はない。

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