「両澤だったらどう書くかな、といつも考えながら…」
とりわけ福田監督が苦労したのは、映画で初登場するキャラクターではなく、テレビシリーズ100話分の歴史を背負った既存のキャラクターのセリフだった。
「映画から登場するオルフェのようなキャラクターなら、書けるんですよ。『最初からこういうキャラです』と言ってしまえば、それで通りますからね。ただ従来のキャラクターに関しては、やっぱり戸惑いがありました。特にラクスは言葉数も少ないし、意外と意地悪で、アスランの扱いを見ても、ひどい女なんですよ(笑)。両澤はそのアスランへの愛情の無さをふとしたやりとりで表現したりして、やっぱりうまいなぁって」
自問自答の日々。
それでもわからなくなったときには、両澤さんの書いたものを見返したり、映像を観返しながら、ノベライズを担当した後藤リウさんとも協力して脚本を作り上げていったという。それでも『FREEDOM』の脚本クレジットの先頭に両澤さんの名前があった。
「やっぱり『僕のものじゃないな』っていう思いがあるんですよね。両澤だったらどう書くかな、ということをいつも考えながら書いていました。それでも映画の後半になるにつれて、自分のペースが出てきちゃったのは否めないなとは感じてます。そうやって出来上がった映像を見ると『いまは止める人がいないんだな』と改めて感じますね」
「だから、笑っていると思いますよ」
そうして出来上がった『FREEDOM』は、いままでの『SEED』とは違うのではないか。そうした思いがあればこそ、従来のファンに受け入れられるかどうか不安だったという。
だが、福田監督の心配をよそに、ファンは拍手喝采で『FREEDOM』を歓迎した。また、歴代ガンダムシリーズにおける興行収入トップ(1982年の『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』約23億円)を42年ぶりに更新した。
完成したフィルムを両澤さんが観たら、どのような感想を抱くのだろうか。
「何度も自問自答しているんですけど、よく彼女は『映画は最終的には監督のものなんだから、好きにすればいいのよ』って言ってましたからね。だから、笑っていると思いますよ」