松本人志が文藝春秋を相手に起こした裁判で、松本人志側が裁判所に提出した「訴状」について、テレビの情報番組や情報バラエティ番組が多数報道した。それだけ視聴者の関心が高く、視聴率を計算できるトピックなのだと思われる。それぞれのテレビ番組は「訴状」をもとに何を伝えたのか。特徴的だった番組をいくつか取り上げ、その姿勢を考察する。(執筆:ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明氏)
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法律的な観点から論評を続ける「ミヤネ屋」
情報番組で、元裁判官や元検事などの弁護士が出演して法律上の論点を整理しながら、くり返しこの問題を報じているのが、日本テレビ系の「ミヤネ屋」(制作・読売テレビ)だ。松本人志の裁判を伝える熱心さでは平日の番組の中で群を抜いている。
2月20日(火)には訴状を独自に入手したとして特集した。
この日出演した大阪地検検事出身の亀井正貴弁護士の「おそらく吉本興業側は、文春をナメたんだと思うんですよ」というコメントはネットニュースなどでも取り上げられていた。スタジオではパネルで訴状の内容を詳しく解説した後に、亀井弁護士と、ハラスメント問題に詳しい三輪記子弁護士が、提訴の前段階での吉本興業の対応などについて振り返っていた。
「被害を訴えた女性が、一般論として、性的に加害を受けたと思った時にすぐに被害を認識したりするのも非常に難しいんですね。それをましてや言うというのはもっと難しい。そういうことで被害を訴えた女性たちが置き去りになる形になっているのもちょっと残念な気はする。会社なりがちゃんと調査を尽くしたうえで対応していくという、法廷外の解決方法はあったと思います」(三輪弁護士)
「(「週刊文春」が)それなりの取材をある程度やっているということを想定した上で、松本さん側からヒアリングした上で、周辺もして。事実関係を固めた上で会見しなければいけない」(亀井弁護士)
松本人志側は名誉を毀損されたとして、5億5000万円の損害賠償に加えて、訴状では「原告が、A子さん・B子さんを含む複数の女性に対し本人らの意思に反して性的行為を強要したかのような記事を掲載しましたが、そのような事実はなく全て誤りでした」(「ミヤネ屋」より)といった文面などを指定した謝罪広告の掲載を求めていることについて、三輪弁護士が次のように語った。
「ただ、これ(謝罪広告)を求めてしまうと逆にこれが認められなかった時のリスクも非常に大きくなるんじゃないかというのは感じました」
「ミヤネ屋」の松本人志の裁判報道の特徴は、複数の弁護士らがスタジオで自身の見解や見立てを語るところだ。
2月22日(木)には「週刊文春」(2月29日号)での「誌上反論」について、刑事問題、労働問題、企業法務を専門とする嵩原安三郎弁護士と中央大学法科大学院教授の野村修也弁護士が論評した。