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三浦 これいったいどんなシチュエーションなの。あ、ナレーションや効果音もちょっと昔の感じでいいね。

都築 滅びかけた地球に宇宙船で帰還した将軍が、優秀な男女の交合で新人類を殖やして、新しい地球をつくろうとする……という壮大な話の、キーとなる場面を再現してあります。

©三浦憲治

 音声は、鳥羽SF未来館で流していた8トラックの音源をもらってきて、デジタルで再録したものを流しています。アナログ感溢れる音の感じがいいでしょう?

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三浦 音に反応して床をぬいぐるみが這ってるんだけど、これは?

都築 漫画『少年アシベ』のキャラクターとしておなじみ、白アザラシのゴマちゃんね。ぬいぐるみがひとつそこにあると、いくらカッコつけた空間づくりをしても、すべてが台無しになるものじゃないですか。そういう脱力感をねらってのこと。この展示をシリアス過ぎると感じるお客さんもいるみたいなので、アートっぽさを打ち消すためにゴマちゃんの力を借りています。

先客がいるかと思ったら、セクシーな人形だった……

都築、三浦の両人は2階へと場所を移す。フロア全体がカフェ&バー「茶と酒 わかめ」となっており、カウンターを挟んでふたりは腰を落ち着ける。

 この階にも所狭しと作品が飾られている。カウンターテーブルには、往年のピンク映画のチラシが埋め込んであり、壁にはかつて見世物小屋に掲げられていた看板絵が掛かる。棚に並ぶのは春画人形と呼ばれる置き物だ。人形の底面を覗き見ると、性器が露わになったりするしくみになっている。

 見どころが多くて辺りをキョロキョロしていた三浦さんが、カウンターの奥へ目を向けたとたん、のけぞって驚く。

三浦 あ! 先客がいるかと思ったら、セクシーな人形だった……。

都築 オリエント工業製のラブドールです。いつもここに座っているんですよ。おさわり自由なので、感触もたしかめていってください。

©三浦憲治

三浦 ラブドールも含めて、全館にわたって楽しめるしかけが満載だね。訪れるのはどんな人たちが多いの?

若い世代や女性が明るく気軽にエロトークを楽しめる

都築 ひとクセあるオヤジたちが集う場になると思いきや、若い世代や女性が思いのほか多くて驚いた。ここのカウンターに座って気軽にエロトークしたり、シモのほうの悩み相談をし合ったりしていますよ。いまの若い人って職場で軽口ひとつでもだれかを傷つけないよう気をつけないといけないし、SNSも炎上などに細心の注意を払いながら使っているんでしょう? ふだんからプレッシャーが大きいんじゃないのかな。ここみたいに何でもありで、ふっと気を抜ける場は、意外に求められているのかもしれない。