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大前 それで何か事件を起こしたいと思ったんですが、事件は事件だけど、ちょっとネタにできるようなもの、写真に撮ってSNSに上げちゃうくらいの、被害を受けた側も怖いと思いながらもしめしめと思ってしまうようなものが何かないかなと思って、こういう事件にしました。

高瀬 絶妙ですよね。これがもっとおどろおどろしい感じのバッジだったら「え、気持ち悪っ、こわっ」ってなるけど、かわいいチワワのバッジだから。

大前 はじめてのミステリーだったので、すごく難しかったです。編集者さんからのフィードバックで、一つの箇所を直しましょうとなると、それに伴って関係するほかの箇所すべてを直さないといけないので、無限にゲームのデバッグ作業をしてるみたいな感じで(笑)。僕の作品のなかでもいちばん読みやすいと思うんですけど、書くのはいちばん辛かったです。

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小説が日常に接近する瞬間

高瀬 そうだったんですね! いや、でも予想したのと全然違う作り方でした。チワワが好きなのかなって(笑)。

大前 そういうわけじゃないです(笑)。でも最近なんか、チワワが日常に接近してきてるっていうか。

高瀬 どういうことですか?

大前 昨日美容室に行ったんですけど、別のお客さんがチワワを連れてきていて。

高瀬 美容室のなかにですか?

大前 パーマ当てられながら、机の上にチワワを置いてずっと喋ってて、チワワはこっちをチラチラ見てくるっていう(笑)。

 それだけじゃなくて、その2日前に谷中霊園のあたりを散歩してたんですよ。なかに交番というか駐在所があるんですけど、そこを通りかかったら、机の上にチワワがいて。

高瀬 へっ⁉

大前 なんか警察官と見つめ合っていました(笑)。迷子なのかなんなのかよくわかんないんですけど。

高瀬 チワワづいている……。

 

大前 書いたことでその題材とかが現れるようになることありませんか?

高瀬 あります。あれ怖いですよね。昨年10月に『うるさいこの音の全部』という本を出して、それはゲームセンターで働きながら小説を書いている主人公が、職場で小説を書いていることがバレて大変、みたいな話なんですけど、それを書いたあとに私も職場で身バレしました(笑)。小説のなかで主人公がいろいろあって仕事辞めたいなと思う場面があるんですけど、本が出たあとで、私も仕事を辞めて。書いている時は辞めると思ってなかったんですが。なんかありますよね、出したモチーフが現実に現れるって。私の場合は結局自分が仕事辞めただけじゃんって話なんですけど、チワワは外部の話じゃないですか。

大前 そうですね。

高瀬 引き寄せてるんですね。だってどっちも経験ないですよ、美容室も駐在所も(笑)。

大前 不思議ですよね。だからまた何か起こるんじゃないかなと。

 

2024年2月9日に往来堂書店にて行われたイベント「理不尽と同調圧力の扱いかた」を再構成しました。

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