「スラム化」されたマンションが発生するリスクも
結論としては、中途半端なエリアにある中古マンションに資産価値の維持はほぼ期待できません。「住み潰そう」という考えで購入する選択肢もなくはないでしょうが、老朽化したマンションでの設備の修繕や更新を考えると、長い期間住み続けるリスクも考慮しなければなりません。つまり、価格が安いからという理由だけで物件を取得するのは賢明な選択とは言えないのです。
これからの時代、郊外のベッドタウンは、前項で述べたようにエリアコンテンツが明確で人を集めることができる一部の都市を除いて、復権を期待できません。親が住んでいる場合でも相続が起こると、まったく流動化できないお荷物=負動産になる可能性があります。
マンションの怖いところは、住んでいなくても毎月の管理費や修繕積立金がかかることです。そのため最近では、相続した老朽マンションを「登記しない」「管理組合に届け出ない」「管理費や修繕積立金を払い込まない」事例が続発しています。真面目に自分だけ修繕積立金を支払っても、マンションは区分所有者全員で価値を維持していく建物ですから、全員が同じ方向を向いていない限り、修繕すらできないのです。
近い将来、多くのマンションで、嫌な表現ですが「スラム化」の問題が避けて通れなくなるかもしれません。修繕はもちろん管理すらされずに、ゴミにあふれ、空き家と化した部屋に正体不明の人物が住むような状態です。
1970年代から1980年代、郊外にできた団地型マンションはビジネスパーソンの憧れでした。しかし月日が経ち、新陳代謝が行なわれなくなった街にあるこれらのマンションは、たった1代でその役割を終えようとしています。
人々の価値観は時代によって変遷します。今、皆が良いと思っていることも、時代の進展によっては逆になることもあります。建物という「永遠に変わらない」ものではないマンションという住まいの行く末を、郊外ベッドタウンに佇むマンション群に見ることができるのです。