『私服だらけの中居正広増刊号~輝いて~』(2009年刊行)は、『いいとも!』がきっかけで生まれた一冊である。当時火曜日のレギュラーだった中居正広がアルタ入りの際に着ている私服が独特のセンスだということが『いいとも増刊号』で話題になり、毎週撮影した私服姿の写真126点を集めて書籍化。「画伯」と言われる独特のユーモラスな筆致による絵(イラスト)も収めた同書は、58万部を売り上げる大ベストセラーとなった。発売日が2009年8月18日で彼の37歳の誕生日だったことから価格も370円と、隅々まで遊び心にあふれていた。
そこには彼一流のサービス精神もあったようだ。「写真撮るっていう意識があったから、派手なのがいいかな~と思って、夏も冬も結構、派手な服着ちゃってる」。本人曰く「イタい」服装には、ある程度自己演出も入っていた。
ただ、そこに彼の個性でもあるヤンキー的部分がにじみ出ていたことも確かだった。番組中の中居正広も、同じ曜日のレギュラーだったココリコ・田中直樹に悪ノリ的いたずらを仕掛けてそれがコーナーにもなるなど、やんちゃ坊主的なところがよく顔をのぞかせていた。
SMAPにとってタモリは大切なお手本だった
また、SMAPがアイドルとして笑いへの道を開拓するなか、バラエティ番組のMCに自らの進む道を思い定めるようになっていた中居正広にとって、タモリは大切なお手本であり、道標となったひとりだった。
あるとき、仕事の流儀を尋ねられた中居正広は、「感情を安定させていたい。それは喜怒哀楽を出さないとか感情を押し殺すとかいう意味ではなくて、いつでも相手の言葉を引き出したり、人の気持ちを受け入れたりできるということ」と語っている。その言葉には、司会のタモリが見せる共演者へのフラットさ、あの「無の状態」と重なるものがある。
同様にフラットな姿勢は、『いいとも!』における香取慎吾や草彅剛にも当てはまるものだろう。彼らがレギュラーになってしばらくした時点で、SMAPは押しも押されもせぬ「国民的アイドル」になっていた。もちろん3人が登場したときの観客席からの歓声もひときわ大きなものがあった。だが中居正広ともども3人は、それぞれの個性を発揮しつつも、『いいとも!』という番組にすっかり溶け込み、タモリを側面からサポートする役回りに徹していた。