こうしてステージ上には、タモリとさんまをはじめとして、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるずという「お笑い第三世代」の面々、そして爆笑問題とナインティナインという現在のテレビバラエティを担う中心的芸人が勢揃いすることになった。それはまさに、壮観の一言だった。
「このメンバーじゃ仲良くできるわけねえじゃねーか」
そこからは、落ち着くどころかカオスをいっそう加速させるような展開になった。おすぎとピーコ、中居正広が壇上に呼ばれ、さらに木梨がなぜかオスマン・サンコンと田中康夫を連れてくる。すると爆笑問題の太田光が、いきなり田中康夫の首を絞めるという挙に出て、かつて『いいとも！』でたけしがやったハプニングを再現するなど、みんなが思い思いに振る舞い始めた。
最後は、太田が「はっきり言ってね、このメンバーじゃ仲良くできるわけねえじゃねーか」とお得意の“暴言”を飛ばし、「だから（ネットが）荒れるんだよ」と相方の田中裕二にツッコまれてようやくオチがつくかたちになった。
この“芸人大集合”が示した熱量の高さは、テレビ史上でも類を見ないほどのものだったと言っていい。それも、『いいとも！』という番組、そしてタモリという人間が築いてきた長年の人脈、その慕われ具合があってのことだろう。
だが、ここでもタモリ自身は実にタモリらしかった。むろん、この日の主役はMCのタモリである。そしてMCの常識からすれば、この特別な場をてきぱきと仕切って周囲をうならせる腕の見せ所と考えても不思議はない。
ところが、この一連の流れのなかでタモリは自ら仕切って進行しようとする素振りなどまったく見せず、いつもの独特のニヤニヤ笑いを浮かべながら、じっとその場にいた。それを見たさんまが、カオスになるのは「あんたの責任！」とツッコんでも動じない。その場にいる芸人たちが定期的に思い出したかのようにタモリに「お疲れ様でした」と言ってくるが、それも場つなぎのため。タモリもそのことは百も承知で、その場を決して締めようとはしない。「仕切らない司会」ぶりは、ここでも終始健在だった。
