文春オンライン

「タモリさんの前では緊張しない」「一度も怒られたことがない」なぜタモリ(78)は多くの芸人たちから慕われ続けるのか?《『笑っていいとも!』最終回を振り返る》

『「笑っていいとも!」とその時代』より#3

2024/03/30
note

タモリは決して怒らなかった。寛容な男だった

 その後、全員で記念撮影からのタモリの胴上げ、片岡鶴太郎ら客席にいる過去のレギュラー出演者へのインタビュー、SMAPの5人がタモリを囲みながら彼らの持ち歌「ありがとう」を歌う場面へと続いた。そして、番組最後のパートとして始まったのが、現レギュラーと過去のレギュラーを合わせたおよそ25組によるタモリへの感謝のスピーチである。

©文藝春秋

 涙ながらの感謝の言葉のなかにも笑いの絶えないスピーチが続くなか、ひとつ印象的だったのは、多くの芸人やタレントが、タモリが絶対に怒らなかったこと、そのずば抜けた寛容さを繰り返し強調していたことだ。

「一度も怒られたことがなかった」(香取慎吾)、「タモリさんの前ではなにを言ってもいいのかな(と思えた)」(さまぁ~ず・三村マサカズ)といった言葉。また笑福亭鶴瓶も、「お笑いビッグ3」のなかで、ビートたけしや明石家さんまの前では緊張するが、タモリの前では緊張しないと、その絶大な安心感を吐露した。

ADVERTISEMENT

©文藝春秋

 また太田光は、いつも失言をしてしまう自分は『いいとも!』でも邪魔者になるんじゃないかと思っていたが、やはり怒られたことがない、と感謝したうえで、そんなタモリの姿勢は実はアバンギャルドなのではないかと語った。

 太田のこの分析は、なかなか興味深い。ここで彼がタモリについて言う「アバンギャルド」、つまり「前衛的」であるとは、ここまで繰り返し述べてきたように、あらゆるルールを嫌悪し、個々のリズムこそを重視するというタモリのジャズセッション的人生観を的確に言い得ていると思えるからだ。

 同じことは、相方の田中裕二がやはりスピーチで述べた言葉にも通じる。田中は、タモリ自身が「『いいとも!』にずっと慣れていない」のではないかと語った。そう見えるのもまた、タモリが、「司会とはこうあるべき」という決まり切った先入観、暗黙のルールを本質的に拒絶していたことの結果だろう。