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ウェディングドレスは「女性の不自由さを暗示してるとしか思えない…」フェミニストの作家が結婚式をやってみた感想は

山内マリコ『結婚とわたし』より#3

2024/05/24

genre : ライフ, 社会

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『あのこは貴族』『ここは退屈迎えに来て』など、数々の作品を世に送り出してきた作家の山内マリコさん。

 ここでは、山内さんが2013年から2017年まで雑誌 『an・an』に連載していた同棲や結婚に関するエッセイをまとめた『結婚とわたし』(筑摩書房)より一部を抜粋してお届けする。

「ウエディングドレスに憧れを抱くタイプ」ではなく、結婚式をやるつもりもなかったのに……。意外なきっかけで決まった結婚パーティーの行く末は? ※〈〉内は文庫化にあたり加筆された、筆者による後日談。(全3回の3回目/最初から読む)

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©afurodatte/イメージマート

◆◆◆

結婚式、やっとくか

 突然ですが、まったくやる予定のなかった結婚式的なものを、やる方向で動きはじめています。というかもう本番がすぐそこまで、2週間後にまで迫ってきてます。

 去年の11月に結婚したものの、二人とも式などはやる気がなくスルーしていたのですが、果たしてこのままなにもしなくていいのだろうかと、思わなくもなかったのでした。友人からもたびたび「絶対やった方がいいよ、あれは親孝行になるから」と勧められていて、そのたびに心がグラついていたけれど、正直言って超めんどくせえ。

 だって結婚式経験者は口を揃えて打ち合わせに忙殺された苦労話を披露してくるし。やるとなったらまず間違いなく夫は丸投げで、わたしの肩に煩雑な仕事が回ってくるんだろうし。そんなの絶対やだ。

 それと言うのも、世の女性にはウエディングドレスに過剰な憧れを抱くタイプと、そうでないタイプがいるものですが、わたしはもう、間違いなく後者なのです。前者の女性は結婚式を「一生に一度の晴れがましい舞台」と思うものですが、後者であるわたしにすると、あれは辱め、拷問のようなもんなんです。さすがに人の結婚式をそんなふうに思ったりはしないのですが、自分のとなると本当に無理。

 でもまあ、記念写真の一枚くらいは撮っておいてもいいんじゃないかと、密かに思っていたのでした。ウエディングドレスがなんとか似合うのも、今年までという気がするし。ちなみに夫にどうしたいか訊くと、「なにもしないより、なにかした方がいいと思う」と、相変わらずの漫然とした答えでした。ま、夫の意見はいいや。

 結婚式アレルギーのわたしですが、唯一心動いたのが、ウエディングドレス姿の3Dフィギュアを作ることでした(ここから話がおかしくなることをご了承ください)。