一方のヘソンもナヨンに恋心を抱いているが、彼女が家族でカナダへ移住することになり、ふたりは離ればなれになってしまう。
心のうちを最後まで相手に告げなかったふたり。でもたった一度きりのデートをした日、ふたりは固く手をつなぐ。
――それから12年後。
24歳になったナヨンはニューヨークに移り、ノラの英語名で劇作家としてのキャリアを歩みはじめた。
ある日、母との会話でヘソンの名を思いだした彼女は、Facebookで彼のアカウントを見つけ、友だち申請をする。申請が承認されたという通知を受け取ったあとの、ノラの浮き立つ様子が初々しい。
PCの画面に向かい、ビデオチャットを始めるノラ。ヘソンの姿が画面に現れるまでの、期待と不安が入り混じった表情を、カメラはたっぷりと間を取って映しだす。別れの日から12年の歳月が流れた、そのあいだの時の流れをも、漏らさずにすくい取ろうとするかのようだ。
大人になったヘソンの精悍な顔が、PCの画面に大写しになるときの驚きは、ノラにとっても観る人にとってもこの上なく大きい。大学卒業後、兵役を終えて就職したヘソンは、彼女のことが忘れられず、オンライン上でずっと彼女の行方を探していたという。
「会いたかった」「私もよ」
深夜のニューヨークと昼間のソウル。時間と空間を隔てたふたりは、こうしてオンライン上で再会した。
その後、ビデオチャットでのやりとりを重ね、お互いの名前を何度も呼びあい、実際に会いたいという気持ちを募らせるノラとヘソン。だが幸せに満ちた日々は、唐突に終わりを迎える。なにかを成し遂げたいと強く願うノラが、いま目を向けたいのは過去ではないのだ。