海外メディアが選ぶ2023年のベストムービーに多数選出され、最高のラブストーリーと絶賛された『パスト ライブス/再会』。24年後に再会する初恋のふたりを描いた、一見するとロマンティックなこの映画が、本当に映しだしたかったものとは――。
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初恋のふたりが24年後に異国の地で再会を果たす。
『パスト ライブス/再会』は、そんなロマンティックな設定を土台にしているが、決してロマンティックなラブストーリーではない。
監督自身の実体験を基に映画化
運命の相手、幸福な結末…多くのラブストーリーがそれらを得るまでの過程を描きだす。
でもこの映画は“なにを得たか”よりも“なにを得られなかったか”に焦点を当てる。
なぜならそのむなしさやままならなさこそ、人生の真実だからだ。
一見ロマンティックでありながら、実はリアリスティック。
そして禁欲的に物語を進めつつ、遂には奔流のようにあふれ出すエモーション。
本作で長編デビューした韓国系カナダ人監督、セリーヌ・ソンは自身の実体験をもとに、その卓越したストーリーテリングで観る人の感情を激しくかき乱す。
12歳で別離、24歳での“再会”はオンライン
舞台となるのは24年前、12年前、そして現在という3つの時代だ。
物語は冒頭でニューヨークのバー・カウンターに語らう3人の男女を映しだし、その関係を過去にさかのぼって、紐解くように展開する。
――24年前。
ソウルに暮らす12歳のナヨンは、母から学校で誰が好きかと聞かれ、同級生のヘソンの名前を挙げる。「たぶん彼と結婚する」といって。