1ページ目から読む
4/5ページ目

 アジアスーパーグリッドこそ、実のところ中国自体が世界で進めている覇権主義的な貿易政策のひとつである「一帯一路」で提唱されているもので、これを実現するために中国国営企業・国家電網公司が中心となって組成している非営利団体が「GEIDCO」です。

 15年9月に中国国家主席・習近平さんが国連開発サミットで提唱した国際送電網構想(グローバルエネルギー・インターコネクション)の実現を目標としており、その「GEIDCO」の会長こそ、今回ロゴの問題となっている国家電網公司の元董事長(経営者)の劉振亜さんであり、副会長がソフトバンクの孫正義さんでした。

東京都で太陽光発電設置義務化が策定される

 突き詰めれば、2020年、新しく総理に就任した菅義偉さんが所信表明で2050年までに脱炭素を政策的に推し進め、環境負荷実質ゼロを目指す方針に関与したのは紛れもなく河野太郎さんであって、我が国のメガソーラーなど再エネ政策の中枢にいた人物が河野太郎さんや務台俊介さん、秋本真利さんら再エネ議連の面々であったのは間違いありません。

ADVERTISEMENT

 自然エネルギー財団の構成員に東京都の元環境局長であった大野輝之さんが就任すると、東京都知事の小池百合子さんが東京都において新築住宅などでの太陽光発電設置義務化を策定したのも見逃せません。環境重視の政策を採りたい小池百合子さんの考えや思いは分かりますが、住戸の屋根などに小規模な太陽光パネルを載せたところで再エネ的にはさしたる価値はないけれども、やった感が大事だということなのでしょうか。

https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/2023/01/04.html

©文藝春秋

中国製ソーラーパネルの国内利用が進むことに

 我が国の家屋やオフィスビルなどにおいて、確かに歴史的・文化的に断熱という考えが乏しく、アルミサッシなど外気の温度を伝えやすい建材が使われ続けてきたことで暖房・冷房効果が低いことは長年問題になっていましたが、効率がそこまで高くない太陽光パネルを家屋に設置させて脱炭素を目指すというのは荒唐無稽であるという議論もあります。

 これらの太陽光パネルというのはほとんどが中国製の製品であり、これらの産業に補助金を出して国産の割合を増やし中国製太陽光パネルに関税をかけるようなことも検討していない上、大規模なソーラーシステムの運用にはこれまた中国製ソフトウェアや制御機構が設置されます。安全保障上、中国製ソーラーパネルの国内利用が進むことの問題が大きいだけでなく、これらのエナジーグリッドに直結する関連ソフトウェアにバックドアが仕掛けられてしまうと「いざというとき」に電源系統に重大な安全保障上のリスクを抱えることになりかねません。

 言い方を変えれば、再エネを運用するためのソフトウェアが中国製である場合、それを電源系統や送電網にぶら下げられたら、普通に中国政府からハッキングされて有事の際に送電を止められかねないリスクがあるでしょう。本件が単純に政府内の再エネ利権に河野太郎さんや務台俊介さんらの再エネ利権があるのではないかという指摘だけでなく、安全保障上のリスクがあるとかねて指摘されてきたのもこのような懸念があるからです。これは「経済」安全保障ではなく、ど真ん中の安全保障の問題と言えます。