日本は島国なので、海が見える駅はいくつもある。ローカル線の風情のある海が見える駅もいいけれど、日立駅のような海が見えるターミナルというのも悪くない。いや、悪くないどころか、海が見えるターミナルとしては日本一なのではないかとすら思う。
駅を行き交う人も列車が来る直前まではホームに降りず、コンコースで海を眺めていたりする。さすがに地元の学生たちは海に目もくれないが、絶景も毎日見ていて日常の風景になっているだけのことだろう。
愛知が誇る“トヨタの駅”「豊田」とのちがいは…
日立と同じ企業城下町には、愛知県の豊田市がある。あちらはトヨタ自動車から豊田市という名前をいただいている。いっぽうで、日立市の場合は日立製作所のほうが後発だ。
古くは江戸時代、水戸藩主の徳川光圀(黄門様)が日立市内の山裾にある神峰神社を参詣した折、太平洋から昇る太陽を見て「領内一の絶景」と讃えたことから「日立」と呼ばれるようになったそうだ。つまり、日立駅から太平洋を望む絶景は、昔からよく知られていた絶景だったというわけだ。
ついでにいえば、黄門様の故事に従うならば、日立の海は昇る朝日を望むのが正統ということになろうか。まあ、それを実現するためには駅前の東横インにでも泊まるしかないのですが。
ひとしきり海を眺めたら駅の外に出る
さて、ひとしきり海を眺めたところで、日立の町を歩こう。日立駅は、海を見下ろす海岸口とその反対の中央口という東西ふたつの出入口を持つ。名前からもわかるように、町の中心に近いのは中央口だ。
駅舎と同じく真新しくキレイに整備された駅前広場。その真ん中には、巨大なオブジェが聳えていた。日立製作所から寄贈されたタービンの動翼だという。このあたりからも、日立という町と日立製作所の関係の深さが窺える。
駅前広場から北側には、大きな煙突も見える。すぐ近くにある日立セメントの工場の煙突だ。ガラス張りの日立駅自由通路の真下にはコンテナが並ぶ貨物駅もあり、工業の町であるということも教えてくれる。
駅前からは、まっすぐ西に向かって目抜き通りが走っている。「平和通り」と呼ばれるこの道には、たくさんの桜の木が植えられていて、日立の名所のひとつになっているそうだ。ひとまず平和通りを西に歩こう。