母と娘、両方の視点からストーリーを見ることができた
「私にとってはただの読書だったの。あんなに夢中になるとは自分でも予想していなかったわ。自分がいかにプリシラ・プレスリーについて無知だったかに驚かされ、彼女が乗り越えたことに共感し、感動させられたの。
グレースランド(プレスリー邸)に引っ越した時、彼女がまだ高校生だったなんて、それまで私は知らなかった。彼女は普通とは違う環境の中で、少女から独立した大人の女性へと成長していったのよ。
私は、自分のアイデンティティを見つけるというテーマに惹かれる傾向にあって、この本には、私自身がティーンの娘たちの母になったタイミングで出会った。つまり、私は母として、そして娘として、両方の視点からこのストーリーを見ることができたの。
あの年齢で私が(親元を離れてひとり)グレースランドに行くと言ったら、両親はどう反応したかという、想像もしつつね」
西ドイツ(当時)でアメリカ陸軍に勤務していたエルヴィスが空軍の将校を父に持つプリシラの前に現れたのは、彼女が14歳だった時。
そこは『エルヴィス』でも語られたが、今作では、アメリカに戻ったエルヴィスと遠距離の関係をしばらく続けた末、プリシラがグレースランドに移住して、現地の高校に入る様子が綴られる。
プリシラ目線で描くエルヴィスの葛藤
大スターであるエルヴィスの恋人として有名なだけに、学校で友達を作るのも容易ではない。大人に囲まれ、派手なライフスタイルに付き合っているせいで、勉強にもついていけなくなった。そんな彼女にとって唯一の心の支えは、愛する人。
だが、多忙なエルヴィスは、彼女が願うほど寄り添ってはくれない。リサ・マリーはその部分の描写を嫌ったのだろうが、コッポラに、エルヴィスを悪者にするつもりはまるでなかった。
「プリシラが回顧録に書いた視点からエルヴィスを見つめることを、私はとても重視した。エルヴィスを、私たちの文化の中に今もしっかりと存在する“神のような人”ではなく、ひとりの人間として描きたかったの。