一番よく作っていたのは、米にマーガリンとケチャップとブラックペッパーを混ぜたやつです。チキンライス的な感じで。たまたまこの間「よく作った貧乏飯ありますか」と聞かれた時にそれを思い出して食べてみたら、やっぱりめちゃくちゃ美味かったです。
一人暮らしをするうえで大変だったこと
――生活費はどうしていたのですか。
すがちゃん 伯母さんが振り込んでくれたり、おばあちゃんがある程度いろいろとやってくれてましたね。やりくりするのは自分なんですけど、あるお金をどう使うか、みたいな。
――一人暮らしをするうえで大変だったことはありましたか。
すがちゃん どうやっても洗濯物がいい匂いになんなくて。やっぱ、いい男っていい匂いじゃないですか。その謎が解明できなかったのが大変というか、嫌でしたね。
あとは学校で「家で縫ってきてください」みたいなのがあるじゃないですか。運動会のゼッケンとか、雑巾とか、提出しないといけないものが。あれを自分でやるのは良いんですけど、僕は一人暮らしを周りに隠していたので、“母親が縫いました風”にやらないといけないのが大変でした。
近所の人は自分が一人暮らしをしていることに気づいていた
――どうして一人暮らしを周りに隠していたのですか。
すがちゃん えー、だって変じゃないですか。その時はとにかく普通が良かったんです。学校で友達に親父のエピソードトークとかは結構してたんですけど、「家庭が丸ごと変」だと思われるのはすごく嫌でしたね。片親だというのも言えなかったし。
でも大人になってから知ったんですけど、誰にも言ってなかったのに、僕が一人暮らしだったこと、みんな知ってたらしいんですよ。
――どうして分かったんでしょう。
すがちゃん 多分、今まで親父とおばあちゃんの声がデカすぎたのかもしれないです。だから「最近声も聞こえないし姿も見えない、あの子1人なんじゃないか」って近所の人が気付いたんだと思います。
――中学1年生から高校3年生まで一人暮らしをして、性格に影響などはありましたか。
すがちゃん だいぶあったと思います。子どもって物事を感情で捉えると思うんです、楽しいことがあったとか、嫌なことがあったとか。それが僕の場合、自分の頭の中で言語化する癖がついたように思います。
1人になってから、考えないといけないこと、解決しないといけないことがたくさんあったから。それはよかったことかもしれないですね。
撮影=細田忠/文藝春秋