「ワニの涙にだまされてはいけない。与党の泣き落としにだまされるなら共犯だ」(野党「共に民主党」の李在明代表)

 4月10日の投開票日が迫る韓国の総選挙(国会議員選挙)。野党が300議席のうち200議席まで獲るのでは、そうなれば単独で改憲も可能になる――。そんな仰天予測も飛び出すほど与党の劣勢が伝えられている。野党が勝ち過ぎることを中間層が警戒することを牽制した野党代表だが、その表情からは余裕も窺える。

 韓国の総選挙は4年に1度、今回は「尹錫悦大統領の中間評価」でもある。

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逆風にさらされる尹大統領 ©時事通信社

 2022年に大統領選挙で勝利して日本やアメリカとの距離を近づけてきた尹大統領と与党「国民の力」だが、前回の2020年総選挙では野党に過半数を大きく上回る180議席を奪われた。与党にとってはその「ねじれ国会」を解消するミッションがかかった屈辱戦と言える。

 当初は野党の内紛などもあり与党側は「与党がどれだけ議席を伸ばすのかが焦点」(保守系紙記者)と楽観的だったが、このひと月あまりで状況は一転した。

実刑を受けた元法相が新党「祖国革新党」を立ち上げ

 潮目が大きく動いたのは3月初旬。台風の目となったのは、元法相の曺国氏だった。

 2019年に法相に指名されるも、検証過程で娘の不正入学疑惑が浮上し、35日という史上最速で退任に追い込まれた。尹大統領は当時検事総長としてこの捜査を主導し、大統領への道を開くきっかけとなった。

 曺元法相はその後、娘と息子の不正入学のために文書を偽造した「公文書偽造」など12件の容疑で起訴され、昨年の第一審に続き、この2月の控訴審でも懲役2年の実刑が宣告された。夫人は、2022年には懲役4年が確定し服役したが、昨年9月に刑期の3分の2を終え、仮釈放されている。

 曺元法相は今年2月の控訴審判決の当日にSNSで新党の結成を示唆し、3月3日に新党「祖国革新党」を立ち上げた。